無機物のみで形成され、高温下でも動作可能な液晶デバイスを開発 東工大

東京工業大学は2022年2月25日、同大科学技術創成研究院などの研究グループが、ホウ素の単原子層からなるボロフェンに類似した新物質(ボロフェン類似物質)が液晶の材料になることを発見したと発表した。さらにこれを使って、高温でも駆動できる光学デバイスを開発した。

ボロフェンはポストグラフェン材料として期待されている物質だが、同研究グループは既にボロフェンに類似した、単層のホウ素ネットワーク構造を有する新規材料「化学ボロフェン」を開発している。今回の研究では、化学ボロフェンの末端部位を脱水反応で立体化させると、液晶機能が発現することを発見した。

流動性と結晶性を兼ね備える液晶素子は、これまで有機物から合成されるものに限られていた。有機物の中でも有機分子から作られる液晶は、分子設計によって特性を制御できる可能性がある一方で、液晶として駆動できる温度範囲が限定されることが課題だった。

研究グループでは、液晶を無機物で合成できれば、安定性などが本質的に異なる新しい材料になると考え、ホウ素と酸素、アルカリ金属のみからなる無機物の化学ボロフェンに着目した。その結果、化学ボロフェンを加熱処理すると結晶性が低下し、流動性が生じて液晶になることを発見。さまざまな分析を行ったところ、液晶化がボロフェンの末端部位の脱水反応によって引き起こされていることを突き止めた。

さらに化学ボロフェンからなる液晶の特性を調べたところ、350℃の高温でも液晶状態が保持できることも確認。研究グループでは、既存の有機液晶では駆動できない高温下など過酷な環境でも動作する新たなデバイス素子としての応用が期待できるとしている。

今回の研究成果は2月24日付『Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)』に掲載された。

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