製造業における自動化導入の現状と課題とは(後編)[ロボティクスとAI導入の最新事情]

TRUST SMITH株式会社 堂本拓磨氏

~製造業における自動化の課題をAI技術で解決する~

近年、製造業においてDXの実現は必要不可欠なものとなっています。自動化ツールとしてハードウェア、ソフトウェアともに様々な製品が利用できるようになりましたが、実際に導入したとしても思ったように効果がでないという声もあるようです。

連載の前編では、東京大学発のAIベンチャーで、AI・数理アルゴリズム・ロボティクス技術を活用して製造業の課題解決を行うTRUST SMITH株式会社の堂本拓磨氏に、製造業、特に工場自動化に関連した最新のAI技術と自動化の現状を中心にお話を伺いました。続く後編では、業界ごとに異なる量産化の課題と、自動化推進に際して求められるエンジニアについて、お話を伺います。(執筆:後藤銀河、写真・画像提供:TRUST SMITH 株式会社)

プロフィール:
顧客価値創造局コンサルタント 堂本 拓磨(どうもと たくま)氏
2020年10月TRUST SMITH株式会社に入社し、顧客価値創造局のコンサルタントとして製造・物流業のクライアントへ向けたAI・ロボティクス技術を用いたソリューション提案に従事。2021年10月より採用・広報・新規事業・COO室などの業務にも携わっている。

自動化関連の製品が普及する一方で新たな課題も

――大手製造業を中心に自動化の取り組みが進む中、課題などは出てきているのでしょうか?

[堂本氏]自動化関連の製品が普及する一方で、汎用品では解決できない課題が出てきています。例えば、自動倉庫を導入した企業では、自動倉庫に付属する専用の折り畳み式コンテナの仕様で形状が指定されていて、他のラインと整合性がとれず、使いづらいという声がありました。

このケースでは、前工程と自動倉庫で用いるコンテナが異なるため、自動倉庫の手前で専用コンテナへの積み替えが必要になり、結果として、効率的・工数的にも無駄が出ていました。

――自動化倉庫のためだけに、積み替え工程を新たに設けるのは、確かに非効率ですね。どうしてそうなるのでしょうか。

[堂本氏]自動倉庫の導入時点では顕在化していなかった、かつ市場に柔軟に対応できるような既製品が無かったことが原因の一つとして挙げられます。様々な形状のコンテナに対応できたり、カスタマイズが可能なシステムであればよいのですが、一般的な汎用品をそのまま導入してもうまくいかず、自動化設備を導入した後に新たな課題が出てしまったのです。最近はこうした問い合わせが増えているように感じます。

全体の傾向として、スマートファクトリーに取り組む企業が増えているのは間違いなく、弊社も、自動化の具体的な進め方や、導入後に出てきた課題に対する提案を求められるケースが増えてきています。多くの製造業で中期経営計画やIRに「スマートファクトリー化」を掲げていますが、自社の自動化における課題の把握、という点では、企業によって差があるという印象です。

――会社によっては、かなり自動化が進んでいるということですね。具体的に、御社ではどのような企業と自動化を進められていますか?

[堂本氏] AGV関連では製造しているものによらず、あらゆるメーカーおよび倉庫などが顧客となります。小売店から問い合わせが来ることもあります。共同研究により新製品の開発をするようなケースでは、ロボットアームメーカーやAGVメーカー、光学機器メーカーなど、多岐にわたります。お客様が自動化を進めつつある中で課題として感じているところをヒアリングして列挙しつつ、その中からまだ取り組めていないところ、費用対効果が高そうな部分を探り、自動化を進めることが多いですが、業界によって課題はまったく違います。

業界によって自動化の課題は千差万別

――一言で自動化といっても、業界によって課題は様々ということでしょうか。

[堂本氏]例えば食品業界でお弁当を詰めるのにロボットアームを使いたい場合、不定形なものを認識して、それを潰さないように掴んで、落とさずに運ぶ、精度よく詰める、といったことが必要になり、既存のビジョンセンサとピッキングロボットが苦手とするタスクの1つです。また食品関連ではHACCP(ハサップ:国際的な食品衛生管理基準)といった特有の衛生基準があるのも難しいところです。

また、医薬品メーカーや卸業者向けのシステムで大切なことの一つに、地震などの災害でも薬品が破損しないことという要件があります。そのため、地震で転倒する恐れがあるような移動式の棚を使ったAGVは、そうしたリスクを回避するという視点で、導入できないといった制限があります。

他の例として、鉄のリサイクルを行う企業の設備で、溶鉱炉につながったダクト内の点検を自動化したいという例がありました。その企業の担当者のお話では、展示会で狭小空間の点検をドローンでできる、というデモを見て導入しようと思ったが、実際に検討を進めていくと難しい点が複数見つかったとのことでした。

――確かに業界によって、導入事例によって、課題は様々ですね。

[堂本氏]他にも、AGVメーカーがロボットメーカーも開発していたり、最適化アルゴリズムにも強いというケースはあまりないので、全体を最適化して導入するという対応が難しい部分はあります。

導入が進んでいるAGVでも、例えば100台同時に導入しようとすると、新たな問題が生じます。AGV同士の干渉をどう回避するのか、どのAGVがどういう順番でタスクを進めるのか、その最適化を考える必要があります。AGVの導入を始めている会社ほど、導入する台数が増えることでマテハン機器同士の連携に困っているケースがあります。ロボット同士をつなぐだけではだめで、相互に干渉するロボットを群制御するというアプローチが大事になります。

AGV同士が共同で作業する空間において、お互いが衝突しない高度な回避機能が備わっている

[堂本氏]弊社ではこうした課題に対応するため、複数のAGVを同時に群制御するシステムを開発しました。複数台のAGVが存在する環境下においても、AGV同士が衝突することなく、最適効率で自動搬送することが可能です。

――ここまでAGVを中心に伺いましたが、人協働ロボットについてはいかがでしょうか。

[堂本氏]生産ラインでよく見られる産業用ロボットは頑丈な柵で囲われていますが、これは人と作業スペースを分けることが法律で求められているためです。将来、工場の完全自動化を進めていく上で、全自動に至るまでの転換期として人とロボットの協働は必ず必要になるでしょうし、今でも工程によっては人とロボットの協働は外せないケースもあります。

弊社の障害物回避型アームロボット「ADAM SMITH」では、人を検知して止まるというだけでなく、回避して動き続けられるように設計しています。これは、危険を察知して毎回止まってしまうと、ラインのタクトタイムに間に合わなくなるからです。そのため、閾値を設けて一定以上の速度で近づいてくる場合のみ停止するが、それ以外では回避しながら動き続ける、といった制御が必要になります。そうした狙いをもって開発しています。

一人では出来ないからこそ、より高い視点から物事を考える必要がある

――自動化、人協働、といったシステムを導入する上で、さまざまな視点から検証する必要があることが分かりました。今後、工場自動化を推進するエンジニアにとって、どのようなスキルが必要だとお考えですか?

[堂本氏]一人で全ての自動化に対応できるエンジニアはなかなかいません。弊社にもロボットに関する幅広い技術知識を持つエンジニアがいますが、それでも最適化や画像認識のアルゴリズムといったところまでは、カバーできません。

ですから、対応できる技術領域の広さというよりは、言われたものをただ実装するだけのエンジニアではなく、自ら課題を把握し、解決策を見出していくことが必要になるのではないでしょうか。自分で考え出せずとも、例えば海外の論文を引っ張ってきて課題を解決できるような、PM(プロジェクトマネジメント)の視点が持てる人、最先端の技術に触れて、自分のものにできる人、より上流工程を考えられるエンジニアが求められていると思います。

画像認識機能を備えたロボットアームという開発案件があったとして、物体を認識するチームとロボットのアルゴリズムを作っているチームがあり、両チーム間の連携が必要になります。こうした場合、どちらかのチームのことしか分からないと、どう連携すればいいのかが分からない。もちろん自分ですべて実装するわけではありませんが、PM的にこうしたら良いとか、この順序で進めるべきといった視点や知識を持っていないと、プロジェクトの推進は難しいでしょう。私は「強いエンジニア」という定義も日々変わると思っているので、最先端の技術に触れて常にキャッチアップしていく努力が必要だと思います。

取材協力

TRUST SMITH株式会社



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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