燃料デブリの固溶体化が、放射能毒性の高い物質の海中への溶け出しを抑えることを発見 東北大ら

東北大学は2022年6月13日、日本原子力研究開発機構、京都大学と共同で、燃料デブリの固溶体化によって放射能毒性の高いアクチノイドが海水に溶け出しにくくなることを発見したと発表した。

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業において、高い放射線量と発熱量の燃料デブリの取り扱いが技術的なハードルになっている。しかし現時点では、燃料デブリの化学的性質はその一部しか分かっていない。

今回の共同研究では、核燃料物質や燃料被覆管材料、および原子炉内の構造材として使用されているステンレス鋼を原料とした模擬デブリを合成。合成時の酸素の有無や加熱時間、原材料の組み合わせを変えて合計37種類の模擬デブリを合成した。

模擬デブリの合成

これらを電子顕微鏡やX線、γ線、レーザー光などによって分析した結果、核燃料の主成分二酸化ウランに、被覆管に含まれるジルコニウム、ステンレス鋼に含まれる鉄が溶け込んだ状態になっている「固溶体化」が起きていることが分かった。

さらに、合成した模擬デブリの水中での安定性を調査。最長400日間の純水や海水中での変化をX線調査したところ、結晶構造には変化が見られなかった。

また、放射能毒性の高いネプツニウムやアメリシウムのアクチノイドを添加した模擬デブリを合成し、それらがどの程度溶け出すかの試験を実施。純水および海水中のいずれでも、それらの物質が溶け出す割合は0.08%未満と、極めて微量であることが分かった。

これらの結果から、燃料デブリ中で固溶体化が進むことが鍵となって、燃料デブリが化学的に安定する効果が見込めることが分かった。

今回の研究により、固溶体化が燃料デブリの長期保管や処理、処分を実施する際の技術開発に関する鍵となることが分かった。現在同大学らでは、放射線が燃料デブリの安定性に与える影響や、燃料デブリのレーザー光を使った分析法、ネプツニウムやアメリシウム以外の放射性物質の溶け出しに関する研究を進めている。

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