はめあい公差とは?はめあいの種類や表記方法について解説!

はめあい公差とは?

公差とは、狙い値に対する最大許容寸法と最小許容寸法の差のことを意味し、「寸法公差」、「幾何公差」、「はめあい公差」の3種類があります。図面で多く用いられているのが寸法公差で、例えば50mmの狙い値に対して、最大許容寸法が51mm、最小許容寸法が49mmの場合、公差は2mmとなります。

一方、「はめあい公差」の「はめあい」とは、穴と軸の組み合わせのことです。例えば金属板をネジやボルトで固定するのも、穴にベアリングをはめ込んだり、軸をベアリングに差し込んだりするのも、穴と軸の組み合わせです。機械や装置では非常によく使われる組み合わせとなります。

はめあいの関係は複雑です。容易に抜き差しできるような余裕のある関係や、一度はめ込んだら簡単には外れない関係など、求められる機能によってさまざまな関係が求められます。そのため、寸法公差と違い、そのようなはめあいの関係に基づいて穴と軸の公差を記号で表します。目的のはめあいの種類や程度により公差が変わるため、「はめあい記号」と「はめあい公差表」を用いてそれぞれの公差を導きます。

はめあいの種類について

すきまばめ

「すきまばめ」とは、穴と軸の間に「すきま」がある状態のはめあいのことです。すきまは、穴の寸法が軸の寸法より大きい場合に生じる差のことで、すきまがあることで、軸をスライドしたり、回転したりできます。

穴の最小許容寸法と軸の最大許容寸法の差が「最小すきま」、穴の最大許容寸法と軸の最小許容寸法の差が「最大すきま」になります。

はめあいの部分に目的の特性を持たせるために、すきまの大小を変える必要があります。例えば、高温になって膨張してもすきまを確保したり、組み立てやすさを優先したりする場合はすきまを大きくします。逆に、精密な運動が求められる部分は、すきまを小さくすることでがたつきをなくします。

しまりばめ

「しまりばめ」とは、穴と軸の間にすきまがなく、「しめしろ」がある状態のはめあいのことです。しめしろは、穴の寸法が軸の寸法より小さい場合に生じる差のことで、圧力を加えることで軸を挿入(圧入)します。部品同士の固定を目的にしており、一度圧入すると、部品を損傷せずに分解することは困難です。

穴の最小許容寸法と軸の最大許容寸法の差が「最大しめしろ」、穴の最大許容寸法と軸の最小許容寸法の差が「最小しめしろ」になります。

しめしろの分、穴を広げるか、軸を縮めて圧入する必要があり、プラスチックハンマーや木づちを使い、部品に傷がつかないように打ち込みます。大きな力が加わる部分の場合、しめしろを大きくすることでより強固に固定できるため、加熱による膨張で穴を広げ、軸を挿入する「焼きばめ」や、機械的な力を利用して圧入します。

中間ばめ

「中間ばめ」とは、すきまばめとしまりばめの中間的なはめあいのことです。すきまばめとしまりばめは、公差によらず、必ずすきまとしめしろが生じます。しかし、中間ばめの場合、公差により、わずかなすきまかしめしろが生じる関係になります。挿入には、しまりばめ程の大きな力は必要なく、一度挿入しても部品を損傷せずに分解できます。

中間ばめは、すきまとしめしろの大小の程度に差をつけることで、穴と軸が固定される力が変わります。わずかなすきまがあり、潤滑剤を使用すれば手で動かせる程度のはめあいから、ほとんどすきまがなく、挿入や分解に鉄ハンマーやハンドプレスを使うはめあい、わずかなしめしろがあり、強い力で挿入や分解をする必要のあるはめあいがあります。

はめあいの表記方法

はめあい公差には軸基準と穴基準がありますが、穴基準を選ぶのが一般的です。穴はリーマーなどで高精度に加工できるためで、穴の寸法を基準にして、軸の公差をはめあいの種類によって決定します。はめあい公差は日本産業規格(JIS)において記号化されたはめあい記号で表記されるため、はめあい公差表を参照に実際の公差を割り出します。

はめあいの表記方法の一例として、「Φ50H7」を挙げます。Φ50は基準となる穴の直径で、Hは穴の公差域、7は公差精度を意味します。穴の公差域はアルファベットの大文字で表し、順番が下がるほど穴径が小さくなり、公差精度は数字が小さくなるほど厳しくなります。

公差域は基準寸法と一致するHが、公差精度は7がよく使われます。Φ50H7をはめあい公差表で調べると公差はで、最小許容寸法が50.000mm、最大許容寸法が50.025mmになることが分かります。

軸の場合は公差域をアルファベットの小文字で表し、順番が下がるほど軸径が大きくなります。公差域はhが基準寸法と一致し、軸基準の「Φ50h7」の公差はで、最小許容寸法が49.975mm、最大許容寸法が50.000mmとなります。

Φ50の穴基準とした場合、すきまばめでは「Φ50H7」と「Φ50g6」の組み合わせ、しまりばめでは「Φ50H7」と「Φ50r6」の組み合わせ、中間ばめでは「Φ50H7」と「Φ50h6」の組み合わせといった具合に、実務で使われるはめあい記号と組み合わせはおおよそ決まっています。

まとめ

設計者が穴と軸の関係に基づき、一からマイクロメートル(µm)レベルではめあい公差を検討するのは大変な作業です。そこで、JIS規格によるはめあい記号とはめあい公差表を使うことで、設計作業を大幅に効率化でき、図面での公差の指示も簡素化できます。

はめあいは大きく3つの種類に分かれ、それぞれの種類の中にも微妙な違いがあるため複雑に感じますが、実務に使われる穴と軸のはめあい記号の組み合わせはある程度決まっています。品質の維持と作業の効率化を両立させるためにも、設計者は、はめあい公差の意味と求め方は必ず押さえておく必要があります。

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