Meta主催による「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」が、2022年7月27(水)、28日(木)の2日間にかけて開催されている。今回は、会場のグランドハイアット東京での展示を中心にレポートする。なお、同エキスポはメディアや一部関係者向けの招待制となっているが、2022年10月18日から開催される「CEATEC 2022」の会場で、一般向けに公開される予定だ。(執筆・撮影:後藤 銀河)
FacebookがMetaに社名を変更するなど、世界中の企業が「メタバース」に熱い視線を送っている。同エキスポは、メタバースに取り組む企業が、その描こうとする未来の一端を紹介している。メタバース向けの新技術展というより、黎明期にあるメタバースで何ができるのか、各社が無限ともいえるコンテンツの可能性を模索する、その最前線を実感できるイベントだ。
Meta
Metaは、オールインワンVRヘッドセット「Meta Quest 2」の体験と、スマートフォンのInstagramアプリを使ったAR技術を展示した。どちらも今では馴染み深い技術だが、メタバースの体験を限りなくリアルなものにしたり、誰にでも使いやすいものにするためには、基礎となる技術のレベルを高めていくことが重要なのだろうと感じた。
バスキュール
インタラクティブなコンテンツ開発を手掛けるバスキュールは、JAXAと連携して、「ISS SPACE WALK in METAVERSE」を展示した。
これは国際宇宙ステーション(ISS)をデジタルツイン化したメタバースで、リアルタイムなISSの位置が反映されているという。VRヘッドセットと移動用のコントローラーを着用すると、360度すべてが宇宙となり、目の前には巨大なISSが浮かび、本当にISSで船外活動をしているような没入感を体験できる。両手に持つ姿勢制御用のコントローラーも、まるで船外活動ユニットでガス噴射をして移動しているような操作感で、慣性によるディレイで動き出したらすぐには止まれないような味付けがなされていた。
近年では宇宙旅行も民間に開放されつつあるが、誰もが行けるわけではない。しかし、メタバースなら、ISSを横目で見ながら眼下に広がる地球を眺めるという、特別な体験を気軽に楽しむことができる。この展示は、非現実的な体験をコンテンツとすることで一般化できる可能性を十分に感じさせるものだった。
大日本印刷(DNP)
DNPは、リアルとバーチャルを融合するXR(Extended Reality)空間構築システム「PARALLEL SITE(パラレルサイト)」によるメタバースのデモンストレーション展示を行った。説明によると、今回紹介されている3つのメタバースコンテンツ「渋谷区立宮下公園」、「秋葉原」、「神田明神」は実証事業として、実際に運用中とのこと。
DNPのメタバース「渋谷区立宮下公園」には、インターネットから誰でもアクセスが可能だ。自治体や商業施設との連携は分かりやすく、既存のEコマースの発展形として注目されるコンテンツだ。デモでは、PARALLEL SITEシステムにより、人物をリアルタイムにメタバース空間に反映させている。カメラを上下左右に動かすと、会場の映像ではなくメタバース空間が表示されており、コンテンツ開発時のイメージが理解しやすい。
凸版印刷
凸版印刷は、同社が展開するビジネス向けメタバースサービス基盤「MiraVerse(ミラバース)」、3Dアバター自動生成サービス「MetaClone(メタクローン)」、バーチャルモールスマートフォンアプリ「Metapa(メタパ)」の3つを展示する。
ミラバースは、メタバースサービス基盤であり、高精細画像によるハイエンドメタバースの提供が可能だという。デモのコンテンツはメタバース内の自動車販売店で、ユーザーの操作により展示車のカラーを変えたり、ホイールを変えたりと、現実とは異なるメタバースならではのセールスポイントが分かりやすい。凸版印刷のミラバースも、広重美術館をメタバース上に構築した「MiraVerseミュージアム 広重」として、公開されている。
また、3Dアバター自動生成サービス「MetaClone(メタクローン)では、顔の写真をアップロードするだけで1分ほどで全身の3Dアバターが生成できる。ショールームやカタログとして展開するのであれば、利用者をメタバースに簡単に取り込む技術が求められる。説明によれば、メタクローンで生成したアバターをミラバースに反映させることも可能だ。
各社の展示とも、使っているAR/VR技術自体は既存のもので、CGもUnityのような空間表現だったりと、メタバース向けに開発した新技術展示というわけではない。それよりも、メタバースがもつ無限の可能性に向けて、各社が得意とする分野で今後の方向性を見出そうとしている取り組みが十分に感じられるものだった。インターネットやEコマースが登場した時にも似たワクワク感、期待感、「世の中を変える」可能性が感じられる展示だった。
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ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河()をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。