マイクロメートルスケールの微細で複雑な形状の部品を高速で再現性よく造形する、氷テンプレートを使用した3Dプリント技術の開発

米カーネギーメロン大学の研究チームが、滑らかな壁面と分岐構造を持つ氷テンプレートを作製できる3Dプリント技術の開発に成功した。氷テンプレートは、最小で50µmほどの微細で複雑な形状を持つ部品を高速で製造するための犠牲テンプレートとして、生体適合性を求める分野への応用が期待される。

同研究成果は2022年7月6日、「Advanced Science」誌に掲載された。

地球上で最も豊富な物質である水は、あらゆる生物の主要な構成要素であり、生体工学の用途に非常に適している。また、水は、氷への相転移が単純かつ迅速であるため、環境に優しい再現性のある構造材料になりうる。

氷テンプレートは、光硬化性、化学的架橋性樹脂や溶剤に溶解した樹脂の中に沈め、3Dプリントの犠牲テンプレートとしてはたらく。樹脂が硬化した後、複雑な微細形状の部品からでも氷を昇華させて蒸気として容易に取り除くことができる。同手法は、従来の層ごとの3Dプリント技術と比較して、桁違いに速く、コストと時間の節約が可能だ。

研究チームは、高解像度3Dプリントシステムを用いて、-35℃に温度制御した基盤上に水を滴下し、急速に氷にすることで、氷テンプレートを作製した。基盤の動きと同期した水滴の放出周波数を調整することで、連続的に変化する円形断面や滑らかな表面の分岐形状の造形に成功した。枝分かれやらせん構造、さらには高さ1.5mmのタコの置物などの複雑な氷の形状を造形できることも実証した。

氷テンプレートは、マイクロ流体用のソフトエラストマー部品製造などへの応用において、大きな利点を持つ。また、生体適合性が高く、環境に優しいため、生体医療用途や生体適合性の高い柔軟な電子機器の製造にも適している。

「本技術は、組織工学やマイクロ流体工学、ソフトロボティクスなどの複雑な流路を持つ微細構造が求められるさまざまな分野に、変革をもたらす可能性があります」とカーネギーメロン大学のOzdoganlar教授は述べた。

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