- 2022-10-6
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- 1次元イオンチャネル, Advanced Materials, アクチュエータ(電気信号の変化を利用して物理的な状態を変化させる装置), イェーガー, パシフィック・リム, ポリマーマトリックス(高分子母材), リチウム金属電池, 人工筋肉, 切り替え(スイッチング), 学術, 浦項工科大学校, 高速切り替え(スイッチング)
力が強く、高速切り替え(スイッチング)できる人工筋肉の製造に応用可能な、機械的強度とイオン伝導率を高めた二官能性高分子電解質が開発された。この研究は韓国の浦項工科大学校によるもので、2022年7月21日付で『Advanced Materials』に掲載された。
映画『パシフィック・リム』では、巨大ロボット「イェーガー」が人類を救うために未知の怪物と戦う。イェーガーには生体を模した人工筋肉が搭載されており、パワーとスピードで怪獣を倒す。近年、現実でも、ロボットにこの映画のような人工筋肉を搭載する研究が進められている。
人工筋肉は、ロボットが人間のように自然に手足を動かすために使われる。人工筋肉を動かすためには、低電圧条件で機械的変形を示すアクチュエータ(電気信号の変化を利用して物理的な状態を変化させる装置)が必要だ。しかし、アクチュエータの主要材料である高分子電解質の機械的強さ(力)と導電性(速度)はトレードオフの関係にある。筋力を上げると切り替え(スイッチング)速度が遅くなり、速度を上げると筋力が低下するため、力と速度を同時に可能にすることはできなかった。
このような限界を克服するために、今回の研究では二官能性の高分子という革新的な概念を導入した。ガラスほどの硬さのポリマーマトリックス(高分子母材)の中に、幅数ナノメートルの1次元イオンチャネルを形成することで、高いイオン伝導率と機械的強さを併せ持つ超イオン高分子電解質を作り出した。
この高分子電解質は、異なる官能基が0.2ナノメートルの距離に存在する。官能基とは、有機化合物の性質を決定づける原子団のことだ。今回作成された高分子電解質は、イオン結合と水素結合の両方の相互作用が可能であり、従来の矛盾を解決する可能性を開くものだ。
今回の成果はソフトロボティクスやウェアラブル技術に革新を起こす可能性があるという。携帯可能な電池(1.5V)を接続し、数ミリ秒の高速切り替え(スイッチング)と大きな力を生み出す、これまでにない人工筋肉の開発に応用できるためだ。さらに、次世代の全固体電気化学デバイスや安定性の高いリチウム金属電池への応用も期待されている。