住友電気工業は2022年10月18日、ポスト5Gを見据え、GaN結晶にN極性、ゲート絶縁膜に世界初のハフニウム(Hf)系の高耐熱高誘電材料を適用した窒化ガリウムトランジスタ(以下、GaN-HEM)を開発したと発表した。高出力、高周波ニーズに対応する次世代情報通信システムの実現に貢献する。
GaN-HEMTは、5Gに代表される高周波増幅器用途に広く用いられているが、ポスト5Gには、通信機器内で使われるトランジスタの高出力化、高周波化への対応が求められる。
GaN結晶には、これまでGa極性(面方位0001)が広く用いられてきたが、さらなる高出力化、高周波化に向け、素子設計の自由度が高まり、かつ漏れ電流を抑制できる逆HEMT構造を実現するN極性(面方位000-1)(Ga極性とは結晶方向が異なる)による特性の改善が注目されている。
N極性の結晶には、ヒロックと呼ばれる異常成長部による凹凸が発生しやすいという課題があった。また、素子設計の逆HEMT構造の実現には、従来の半導体バリア層に代わり、ゲート電極に対してバリアとなる良質なゲート絶縁膜の開発という課題があった。
そこで同社は、高誘電材料を用いたN極性結晶のトランジスタを開発。N極性の結晶は高品質化によってヒロックがなく、ゲート絶縁膜は世界で初めて、最先端のSiトランジスタに用いられるハフニウム(Hf)系の高耐熱高誘電材料の一種を適用させている。開発品は、良好な高周波特性を持つ。
高周波特性、低消費電力に優れるGaN-HEMTは、ポスト5Gに不可欠であり、さらなる特性の改善が期待されているが、開発品のGaN-HEMTは、特性の改善に大きく貢献するものとなる。同社は今後も、技術開発を進め、高周波通信のさらなる高度化を目指す。