エネルギー密度を40%向上した、アノードフリー・リチウムイオン電池の開発

電気自動車(EV)において重要な電池寿命や充電速度を左右するのが、アノード(負極)材だ。電池産業は、新しい技術やアノード材を導入することで、電池容量を増やす方法を見つけることに力を注いできた。一方、韓国の浦項工科大学(POSTECH)の研究チームが、蔚山科学技術研究所(UNIST)と共同で、アノード材を使用せずにエネルギー密度を高める、アノードフリー・リチウムイオン電池を開発した。

同研究成果は2022年9月14日、「Advanced Functional Materials」誌に掲載された。

リチウムイオン電池は通常、充放電時にリチウムイオンのアノードへの流入出が繰り返され、アノード材の構造が変化するため、経年劣化により電池容量が減少していく。アノード材を使用しないで、むき出しのアノード集電体だけで充放電できれば、電池容量を決定するエネルギー密度が高まると考えられる。しかし、同手法では、アノードがリチウムイオンを安定して蓄えられず、大きく膨らみ、電池の寿命を縮めてしまうという致命的な弱点があった。

そこで研究チームは、ポリエチレンイミンやカーボンブラックなどで構成されるイオン伝導層でアノード集電体をコーティングすることで、アノードフリー・リチウムイオン電池の開発に成功した。イオン伝導性基材は、アノードの保護層を形成するだけでなく、アノードの膨張を最小限に抑えるという。

同電池では、炭酸塩ベースの電解液中で、4.2mAh/cm2の高容量と2.1mA/cm2の高電流密度を長期間維持できることが分かった。また、イオン伝導性基材は、リチウムイオンを蓄えるのに有利にはたらくと、理論と実験の両面から証明された。同電池の体積エネルギー密は、従来の電池より40%高く、EVに搭載すれば、航続距離630kmに相当する。

さらに注目されるのは、アルジロダイト型硫化物固体電解質を用いたハーフセルでの実証にも成功したことである。同電池は、50サイクルで97%の充放電効率を示した。高容量を長時間維持できるため、爆発の危険がない全固体電池の実用化を加速すると期待される。

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