MITの学生チーム、金属3Dプリンティング用金型鋼材料を開発――Teslaギガファクトリーの金型製造も

MITの学生チームは、3Dプリント可能な新しい金型鋼材料を発表し、ASM Materials Education Foundationが主催する学生向けデザインコンペで3位を獲得した。大型の金型を製造可能で、TeslaがEV製造ライン向けに採用を検討しているという。

チームのメンバー、Ian Chen氏とKyle Markland氏によるプロジェクトは、2021年春の授業がきっかけだ。指導したGregory Olson教授は、世界でも有数の計算材料科学者の一人で、その方法論は、AppleがApple Watchの製作に利用し、TeslaのCEOであるElon Musk氏の興味を引いた。

Olson教授はMusk氏に関して「航続距離が長く、かつ安価なEVを製造するために、彼はアルミニウム構造を手頃な価格で実現する必要があった」と語る。小型の自動車模型用ダイキャストを見たMusk氏は「これをスケールアップしてくれれば、自動車を丸ごと鋳造するよ」と言ったという。

Teslaは2022年3月に、ギガファクトリー・ベルリンを開所している。そこでは、製造プロセスの簡素化とコスト削減のため、多目的スポーツ車(SUV)「Model Y」向けに大型のダイキャストマシン「ギガプレス」を導入し、少ないピースでボディを成形する。ここでのアルミ鋳造にOlson氏の計算手法が活用されている。

ただし、部品が大きくなると冷却に時間がかかるため、金型内部の細いチャンネルに冷却水を流すコンフォーマルクーリングという手法が役に立つ。形状が複雑なため、金属3Dプリントが有効な製造法になるが「従来の鉄鋼は、プリントするには非常に脆く壊れやすい」とOlson教授は説明する。

研究チームは、材料特性の計算手法のひとつ「CALPHAD」を使用して鉄ベースの新しい金属を設計した。また、熱力学的材料モデルを使うことで、新材料がさまざまな状態下でどう機能するかも予測できた。

新しい合金は、溶かされ、噴霧され、微小な粉末になった。この粉末を層状にしてレーザーで溶融し、3D部品の造形に成功した。学生チームのアドバイザーを務めた大学院生のFlorian Hengsbach氏は「優れた熱伝導性、硬度、強靭性を備え、実際にプリントできるという、非常に有望な工具鋼を設計した」と語る。

Hengsbach氏によると「コンフォーマル冷却チャンネルを使いたいところならどこでも、この材料は使用できる」ため、射出成形、プレス成形など潜在的な用途は多い。Teslaも高い関心を寄せており、研究チームとの間で交渉が進んでいる。

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