加圧熱成形できるセラミック材料を発見――複雑な電子部品に密着できるヒートシンクも可能に

Photo by Matthew Modoono/Northeastern University

ノースイースタン大学の研究チームが、薄くて複雑な形状に加圧熱成形できる新たなセラミック材料を開発した。振動技術およびテープキャスティングと組み合わせた光重合プロセスにより作製した窒化ホウ素複合材料シートが、薄くて複雑な形状に加圧熱成形できることを発見し、実際に厚さ1mm以下で、複雑な電子部品の表面形状に密着するヒートシンクに加圧熱成形した。薄型で複雑な形状のオールセラミック材料を、低コストかつ高速で成形できるブレークスルー技術として期待している。研究成果が、2022年9月4日の『Advanced Materials』誌に公開されている。

一般的にセラミック材料は、大きな温度変化や機械的負荷を受けると容易に破壊してしまい、熱可塑性プラスチックや金属材料シートのように、薄型で複雑な形状には熱成形できないとされている。研究チームは、実験室で新しいセラミック化合物の取り扱いを間違えたことで、偶然に熱成形可能なセラミック複合材料を見出したという。

窒化ホウ素複合材料のスラリーを振動させたところ、瞬間的に液状化することを発見し、何度か再現試験で確認すると同時に、「加圧によって変形を制御できること」、そして「加圧熱成形プロセスが非常に高速かつ低コストで実施可能であること」がわかったと、研究チームは語る。

実用化の観点から加圧熱成形用のプリフォームとして、振動技術およびテープキャスティング(スラリーを延ばしてシート状に加工する技術)と組み合わせた光重合プロセスにより、窒化ホウ素複合材料シートを作製した。そしてこのプリフォームが非ニュートン系粘性挙動(せん断応力が流れの速度勾配と比例関係にないこと)を示し、200μmの薄さまで複雑な形状に加圧熱成形できることを実証した。窒化ホウ素は熱伝導率が高く、ポリマー複合材料の高熱伝導化のための窒化物フィラーとして検討されていることから、小型電子デバイスのプリント基板など、さまざまな電子部品の表面形状に密着する薄型放熱性ヒートシンクに加圧熱成形できることを確認した。

スマートフォンなどのモバイルデバイスでは、ヒートシンクとしても機能する大型のアルミ製ケースを利用する場合も多い。研究チームは、「開発したセラミック材料は1mm以下の厚さにして、冷却しようとするプリント基板など、電子部品の複雑な表面形状に密着するように成形できる。金属よりも薄くて軽く高効率のヒートシンクを、低コストで高速に製造できる」と語る。

更に、「無線デバイスにアルミ製ヒートシンクを用いると、無線信号と相互作用してしまうアンテナを複数導入するようなものだ。フォノニック結晶をベースとするセラミックでは、電子の輸送なしに熱伝導するため無線周波数とは干渉しない」と、そのメリットを説明する。研究チームは現在、スタートアップ企業であるFourierを通じて製品開発を行うとともに、ミュンヘンのスタートアップ企業とも連携し、ヨーロッパとアメリカにおける開発実用化の展開に期待している。

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