クリーンテック業界を取り巻く、大きな二つのトレンドとは[クリーンテック業界の最新事情]

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Nature株式会社 創業者 塩出 晴海氏

~2050年カーボンニュートラルに向けたクリーンテックの取り組み~
地球規模の課題である気候変動問題の解決に向け、2015年に採択されたパリ協定では、「世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」、「今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること」等を合意しました。日本でもその実現に向けて、「2050年カーボンニュートラル実現」という長期目標を掲げています。この取り組みには、石油などの化石燃料から再生可能エネルギーへのシフトが必要不可欠です。それを実現する技術領域であるクリーンテック業界には、どのような課題があるのでしょうか。

今回の連載では、家庭向けスマートリモコンやエネルギーマネジメントデバイスをコアに、スマートグリッド向けサービスの開発に取り組むNature株式会社 創業者の塩出 晴海氏に、太陽光発電を中心としたクリーンテック業界を取り巻く状況や今後の展望について、お話を伺います。(執筆:後藤 銀河 撮影:編集部)

プロフィール
Nature株式会社 創業者 塩出 晴海氏
13才の頃にインベーダーゲームを自作、2008年にスウェーデン王立工科大学でComputer Scienceの修士課程を修了、その後3カ月間洋上で生活。三井物産に入社し、途上国での電力事業投資・開発等を経験。2016年ハーバード・ビジネス・スクールでMBA課程を修了。ハーバード大在学中にNatureを創業。

――まず、御社の事業概要とサービスの強みをご紹介いただけますか?

[塩出氏]弊社は、「自然との共生をドライブする」ことを会社のミッションとして、再生可能エネルギー100%の世界を目指しています。代表的な製品としては、手軽にスマートホームを実現できるスマートリモコン「Nature Remo(ネイチャーリモ)」というIoTプロダクトを作っていて、コンシューマー向けに販売しています。Nature Remoは2017年10月に発売し、これまでシリーズ累計で50万台を越える販売実績がありますが、これはお客様にNature Remoの利便性と快適性をご好評いただき、ご購入いただいていると考えています。

Nature Remoは単なるスマートリモコンとしてだけではなく、もともと将来的には電力のデマンドをコントロール(需給調整)していきたいという意図があって開発したものです。そして、これを実現するため、2022年6月より、「Nature Remo」の自動で家電を制御する機能「Nature Smart Eco Mode(ネイチャースマートエコモード)」を活用した電力小売事業者向けの「デマンドレスポンス支援サービス」を提供しております。デマンドレスポンス(※1)とは、電力の需要側をコントロールし、需要と供給のバランスを調整する取り組みです。昨今の電力ひっ迫の状況を踏まえ、各社がデマンドレスポンスの取り組みを始めております。

(※1)デマンドレスポンス参考サイト(経済産業省 資源エネルギー省 ディマンド・リスポンス(DR)について

——ありがとうございます。会社のミッションとして「自然との共生」をかかげられているのですね。製品やサービスについて、もう少し詳しくご紹介いただけますか?

[塩出氏]主な製品としては、家電をスマートフォンやスマートスピーカーで操作できる「Nature Remo」シリーズ、家庭の電力使用量の可視化や接続された機器のコントロールなどエネルギーマネジメントを可能にする「Nature Remo E」シリーズの2つがあります。それに加え、先ほどご紹介した「デマンドレスポンス支援サービス」を提供しています。

スマートリモコン「Nature Remo 3」。自宅にあるエアコンやテレビ、照明など赤外線リモコン対応家電が、スマートフォンからコントロールできるようになる。
画像提供:Nature

[塩出氏]Nature Remoは、スマートホーム向けに利便性と快適性を追求したスマートリモコンです。赤外線方式のリモコンを備えた家電であれば、メーカーや型番・年式などに関係なく使用できます。スマートフォンで外出先から家電の操作ができるほか、スマートスピーカーと連携することで、お持ちの家電を声で操作することも可能です。

2017年に最初のモデルを発売した頃は、目新しさもあってイノベーターやアーリーアダプター層に受け入れられていましたが、これからマジョリティ層に向けて展開して行く上では、誰でも簡単に使えるようにすることがポイントになってくると考えています。

家庭でのエネルギーマネジメントを実現する次世代HEMS「Nature Remo E」。自宅に設置した蓄電池や太陽光発電システム、EVパワーステーションやエコキュート、スマートメーターなどECHONET Lite通信に対応した機器と連動したエネルギーマネジメントを可能にする。
画像提供:Nature

[塩出氏]Nature Remo Eは家庭でのエネルギーマネジメントを可能にする次世代HEMS(Home Energy Management System)です。太陽光発電システムや蓄電池、EVパワーステーション(EVの充電池を家庭用電力として利用するV2H:Vehicle to Homeシステム)、スマートメーターなどと接続して、発電量や電力使用量をリアルタイムにモニタリングしたり、制御することができます。また2022年11月には、1日の電気料金の目安量の表示もできるようになりました。これまで敷居が高かった家庭でのエネルギーマネジメントが誰でも手軽に行えるようにと開発しました。

家庭に設置された太陽光発電システムや蓄電システムなどの電力を数値として見える化し、1日の電力消費、太陽光発電による売電、電力系統からの買電、蓄電池、EVパワーステーションの充電・放電といった、電力のトレンドグラフと累積の電力量を数分単位で確認することができ、効果的な省エネ、電力の有効活用に繋がります。今後の機能強化のポイントとしては、クリーンエネルギーとの連携だと考えています。

弊社の製品は、自社ECサイト「Nature Store」やAmazonなど各ECサイトで販売(※2)しており、お客様からも高い評価をいただいています。スマートリモコンとしての高い利便性、デザイン性の高いスマートフォンを軸にした電力のデマンドコントロールができる点が、弊社製品の強みだと考えています。

(※2)2023年1月13日時点では、Nature Remo Eの直販は「Nature Store」のみで対応。

再エネへのシフトが進むと、発電の所在は電力会社から需要家側になる

[塩出氏]今世の中で起こっているクリーンテック業界を取り巻くトレンドとしては、大きく二つあると捉えています。一つは太陽光発電が普及してきたことで、再生可能エネルギーへのシフトが進んだこと。もう一つは、再生可能エネルギーへのシフトに伴って、発電の所在が電力会社から需要家に移っていることです。

弊社の「Nature Remo E」がターゲットとしている戸建て住宅を例にすると、今後、戸建てにおけるライフスタイルは、太陽光パネルを屋根にのせて自家発電し、自家用車はEV、エコキュートでお湯を沸かす、といった世界感になっていくのはほぼ間違いないと考えています。そうした環境では、自分で発電した電気を極力自分の家で使った方が経済的なメリットがありますから、「Nature Remo E」を活用いただき、エネルギーマネジメントを行い、自家消費率を最大化することがより重要になります。

――Nature Remoで家電のスマート化を可能にし、Nature Remo Eが電力の収支をリアルタイムで可視化する。これらを連携させることで家庭内の効率的なエネルギーマネジメントを実現するということですね。

[塩出氏]はい、現状では自家消費率の最大化というところにフォーカスしていますが、今後、お客様のネットワークが広がっていくと、次は家レベルからコミュニティや地域といったレベルでの電力調整ができるようになってきます。そうすると、電力需要のピークが下がり、稼働する火力発電所を減らすことができます。これをバーチャル発電所と呼んでいますが、弊社もこうしたステップに合わせて、製品の開発・アップデートを行い、バーチャル発電所やスマートグリッドを実現していくことを考えています。

次回は、「今起こりつつあるエネルギー革命とは」と題してお話を伺います。

取材協力

Nature 株式会社



ライタープロフィール
後藤 銀河
アメショーの銀河(♂)をこよなく愛すライター兼編集者。エンジニアのバックグラウンドを生かし、国内外のニュース記事を中心に誰が読んでもわかりやすい文章を書けるよう、日々奮闘中。


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