神戸製鋼所は2023年10月31日、厚鋼板に疲労亀裂の発生を抑制する機能を付加し、疲労亀裂発生寿命を改善した耐疲労鋼板「EX-Facter」を商品化したことを発表した。新来島どっくが初採用し、すでに4隻の適用実績を重ね、今後、一般貨物船、自動車運搬船等25隻への継続採用を計画している。
金属材料の疲労過程は、亀裂発生と亀裂進展に分けられるが、同社は厚鋼板の疲労亀裂発生までの損傷に着目。最適成分設計とTMCP技術を駆使し、亀裂の発生を抑制できる鋼板を業界で初めて開発した。特に造船分野、橋梁分野での課題解決に貢献する。全厚試験片での疲労試験では、繰返し数:1千万回の疲労強度が従来鋼に比べ36%向上している。
EX-Facterは、日本海事協会より、船体用圧延鋼板として性能疲労設計曲線を保証できる、母材耐疲労鋼板の製造法承認を取得。新来島どっくで建造された一般貨物船の船倉上部開口コーナー部に初適用された。
造船業界では、構造安全性向上を目的とした部材厚増加、鋼材重量増が進んでいるが、従来以上の燃費効率の改善が求められている。こうした課題に対し、EX-Facterは疲労破壊に対する安全性を確保しつつ、薄肉化等、設計の合理化が期待できる。
また、大型車の交通量が多い路線で、鋼製橋梁の路面下の床構造部位である鋼床版の疲労損傷対策が課題になっていることから、橋梁分野へのソリューション提案にも取り組んでいる。EX-Facterは、鋼床版の部材点検時に、外観からの目視点検では発見が困難な疲労亀裂発生部位であるデッキプレートへの適用を提案している。
鋼床版デッキプレートとUリブの溶接部を模擬した疲労試験では、2倍の疲労亀裂発生寿命の改善効果を確認している。鋼板強度、鋼板サイズ、部材別等の影響に関する調査も進め、鋼床版を含め鋼製橋梁への適用提案を推進していく。