コイントスは実は公平ではない?――コインをはじく時と同じ面が出る可能性のほうが高いことを、約35万回分のデータで検証

蘭アムステルダム大学を中心とする国際研究チームが、コインの表が上の状態でコイントスをすると、その結果は表が上になることが多いということを、約35万回分のデータで示した。この研究の論文は、2023年10月6日付でプレプリントサーバー「Arxiv」に投稿され、同月10日付で改訂版が公開された。

何かを決めたり賭けに出たりする際に、コイントスをしたことがある人は多いだろう。しかし、その結果が本当はランダムではないかもしれない、と考える人はほとんどいない。だが、よく知られている物理モデルでは、一般に人々が予想するよりもわずかにランダム性が低いことが示唆されていた。

2007年に発表された研究では、コインの初期位置やはじく速度と角度を設定することで、100%予測可能な結果を出すコイントス装置が作製され、コイントスはランダムではなく物理的な問題であると主張された。この研究では、人が普通のコインをはじくとき、そのコインは空中を動く間にわずかな「ぐらつき」を示すということが提示されている。その結果、コインははじかれた時の面を上にしている時間が長くなり、同じ面が上になった状態で落ちる可能性が高くなる。この研究のモデルでは、同じ面の結果が出る確率は約51%と推定されている。

研究チームは、このモデルを実際に検証することにし、大規模なコイントス実験を実施したり、オンラインで実験への参加を呼びかけたりするなどして、46種類の通貨を使ったコイントス35万757回分のデータを集めることに成功した。その検証活動の一部として、2022年12月4日にオランダのアムステルダムで12時間に及ぶコイントスマラソンが実施され、その様子を記録した動画はYouTubeで公開されている。

この検証実験の結果、コインの表を上にした状態でコイントスをすると表が出ることが多く、裏を上にした状態でコインをはじいても同じパターンになることが分かった。今回の実験での平均は50.8%だったため、先行研究の物理モデルによる予測に非常に近いといえる。ただし、同一の面が出やすいかどうかについては、個人差がかなりあることも明らかになった。

また、人々がコインの表か裏のどちらかについて明確な好みを持っていないことも分かったという。つまり、特定の「幸運な面」があるわけではないが、コイントスをする前にどちらが上を向いているかを知っていると、より幸運になれるということだ。

この結果は、ほとんどの人が考えているほどコイントスが完全に公平というわけではないことを示している。この数値はそれほど大きな違いになるとは思えないかもしれない。しかし、例えば、あるサッカーチームが200試合プレーしたとすると、そのうちの2試合で試合開始前のコイントスで勝つチームがどちらになるのか、単なる運で決まるわけではないことになる。

また、例えば1回1ドルを賭けるコイントスで、その結果によって獲得できる金額は0ドルあるいは2ドルというルールで1000回繰り返した場合、コインがどちらの面から始まるかを知っていれば、平均19ドル獲得できることになるという。このようなことは日常生活では起こらないだろうが、コイントスで重要な決定をする場合は、コイントスをどちらの面で始めるのかを秘密にしておくことが賢明だと、論文の責任著者であるFrantišek Bartoš氏は述べている。

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