ロボットエンジニアになるには?仕事内容や求められるスキルセットなどについて解説

「ロボットエンジニアになるには、どんな進路をとればいいのだろう」
「転職先としてロボットエンジニアを考えているが、自分にもなれるのだろうか」
「そもそもロボットエンジニアって、どんな仕事なんだろう」

こんな疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか?
本記事では次の内容について、ロボット業界で10年以上働いている筆者が分かりやすく解説します。

・ロボットエンジニアの仕事内容
・ロボットエンジニアになるには
・ロボットエンジニアが売り手市場である3つの理由
・ロボットエンジニアとして求められるスキルセット

就職・転職先としてロボットエンジニアを目指したい方、ロボットエンジニアの仕事内容について深く知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

ロボットエンジニアとは

ロボットエンジニアは、人々の生活を豊かにするためのロボットをつくる仕事です。ロボットは、さまざまな技術を組み合わせたハイテク製品です。そのため、一言でロボットエンジニアと言っても多くの仕事があります。

ここでは、ロボットエンジニアを大きく4つに分類し、それぞれの仕事内容について解説します。

ロボットエンジニアの分類①:ハードウェアエンジニア

ハードウェアエンジニアの仕事内容は、次のようなものがあります。

1.設計
ロボットの形状やサイズ、可動範囲を決定します。その後、ロボットを具体的な形にするための設計を行います。

設計にはCAD(Computer Aided Design)ツールを使用します。コンピュータ上でロボットの形状をデザインし、ロボットの部品の設計図を書きます。

使用するロボットの部品の中には、他社から購入した部品もあります。例えば、センサーや減速機などです。ハードウェアエンジニアにとって、これらの部品の選定も重要な役割となります。

2.組み立て
設計・選定した部品を用いて、ロボットの組み立てを行います。

企業の規模によっては設計部門と製造部門が分かれており、組み立ては製造部門の担当が行います。しかし、新機種の試作の場合は、多くの場合、ハードウェアエンジニア自身が組み立てをしたり、製造部門の組み立ての立ち合いをします。

3.評価試験
完成したロボットの動作や性能を評価します。評価試験によってロボットの問題点が見つかった場合、設計や組み立ての工程から見直すこともあります。

ロボットエンジニアの分類②:ソフトウェアエンジニア

ソフトウェアエンジニアは、ロボットが適切に動作するためのプログラムを作成する役割を持つ専門家です。主な仕事内容は、次のようなものがあります。

1.アルゴリズムの設計と開発
ロボットが自律的に動作・判断するロジック(アルゴリズム)を考えます。アルゴリズムが正しく動作するか確認するために、シミュレーションソフトウェアを使います。

2.プログラミング
アルゴリズムをコンピュータで実行できるように、プログラムとして実装します。ロボット開発で使用する言語は、C言語、C++、Java、Pythonなどが多いと言われています。

3.テスト・デバッグ
作成したプログラムが意図した通りに動作するか、シミュレーション上や実際のロボットでテストします。意図しない動作をした場合は、プログラムの問題箇所を突き止め、正しく動作するように修正します。

ロボットエンジニアの分類③:システムエンジニア

システムエンジニアは、ロボットをお客様の用途に合わせて、一つのシステムとして動作させる役割を持つエンジニアです。主な仕事内容は、次のようなものがあります。

1.ティーチング
ティーチングペンダントというデバイスを使用して、ロボットの動きをプログラミングし、設定する作業をティーチングと言います。

例えば、工場の組み立てラインに導入するロボットでは、部品を正確な位置に置く動作をティーチングします。

2.周辺機器との連携
ロボットは、センサーやカメラ、コンベヤベルトなどの周辺機器と連携して動作することが多いです。これらの機器とのデータのやり取りを確保するための、機器同士の設定やプログラミングを行います。

例えば、製品がコンベヤベルト上を移動してきたとき、カメラで製品の位置を確認し、ロボットが製品を掴む作業があります。この場合、システムエンジニアはロボットとコンベヤベルト、カメラを連携させて一連の作業を実現します。

ロボットエンジニアの分類④:フィールドエンジニア

フィールドエンジニアはロボットが実際に使われている現場に出向いて、ロボットのメンテナンスやトラブルシューティングなどを担当する専門家です。主な仕事内容は、次のようなものがあります。

1.メンテナンス
ロボットの定期的な点検を行い、長期的な安定動作を確保します。メンテナンスには、消耗部品の交換・点検以外にも、ソフトウェアのアップデートや、パラメータの調整が含まれることもあります。

2.故障時の対応
ロボットが故障した際に、現場でトラブルシューティングを行います。故障の原因を特定し、修理を実施します。お客様に故障を予防するためのアドバイスや改善提案を行うこともあります。

ロボットエンジニアになるには

ロボットエンジニアになるためには、いくつかの方法があります。ここでは、一般的なロボットエンジニアのキャリアパスを紹介します。

大学の工学部を卒業し、ロボットメーカー・ロボットSIerに就職する

新卒でロボットメーカー・ロボットSIerに就職するという進路です。ロボットエンジニアの多くが大学の工学部を卒業しており、このルートがロボットエンジニアになるには最も一般的と言えるでしょう。

近年ではロボットの知能化に伴い、AIやナビゲーションなどのソフトウェア技術をロボットに適用する事例が増えています。そのため、情報系学部の学生にも、ロボットエンジニアへの道が広がっています。

ロボットエンジニアの就職先は、大きくロボットメーカーとロボットSIerに分かれています。ロボットメーカーは、ロボットそのものを設計・製造・販売する会社です。ロボットSIerは、ロボットメーカーのロボットを使ってロボットシステムを設計・製作・販売する会社です。

工業高校や工業高等専門学校(高専)を卒業し、ロボットメーカー・ロボットSIerに就職する

ロボットメーカー・ロボットSIerは、即戦力になりやすい工業高校卒・高専卒の学生を採用するための採用枠を設けています。

学校によっては、会社への推薦枠が設けられている場合もあるでしょう。進路担当の先生に、ロボットメーカー・ロボットSIerの推薦枠があるか聞いてみるのも手です。

製造業系の会社から、ロボットメーカー・ロボットSIerに転職する

製造業の会社でエンジニアとして働いていれば、その技術を活かしてロボット業界に転職できるケースもあります。

実際にロボットメーカー勤務の筆者の職場では、自動車部品メーカーや総合電機メーカーから転職してきた人もいます。

異業種からロボット業界に転職して活躍するエンジニアとして、次のようなケースが考えられます。

・前職は自動車部品の機械設計を担当し、現職でロボットの動力伝達部の設計を担当する。
・前職は家電製品の回路設計を担当し、現職でロボットコントローラの回路設計を担当する。

派遣エンジニアとしてロボットメーカー・ロボットSIerで働く

ロボットメーカー・ロボットSIerでは多くの派遣エンジニアが働いています。その業務内容は多岐にわたりますが、例えば次のようなものがあります。

・ロボットの設計業務:CADを使ってロボット部品の設計・製図を行う。
・自動化生産設備の開発:お客様の工場内でロボットを用いた生産設備の開発を行う。

派遣エンジニアはさまざまな企業で働くため、一つの会社に偏らず、スキルアップしていけるという魅力があります。

下記の派遣エンジニアへのインタビュー記事では、協働ロボットの導入・設備の自動化に携わったエンジニアキャリアや、複合機や自動車部品など、さまざまな製品・業務を担当したエンジニアのキャリアが詳しく紹介されています。ぜひ参考にしてみてください。

分野の異なる技術を組み合わせ、「自動化」の領域で価値を発揮する。「自動化」のプロが歩んできたハイブリッドなキャリア──メイテック 矢島 照幸氏

生産設備、自動車部品、民生品などの経験を経て、産業用ロボットの設計開発で約14年。機械系エンジニアが歩んだキャリア___メイテック 池田 善朗氏

やりたい仕事・製品が決まっていないからこそ、派遣エンジニアの道を選択。監視装置、複合機、自動車部品と、製品、業務の幅を広げたエンジニアキャリア──メイテックフィルダーズ 西島 大貴氏

ロボットエンジニアの今後:売り手市場である3つの理由

ロボットエンジニアは人手不足の傾向にあり、今後も売り手市場の傾向が続くと筆者は考えています。その理由は、以下の3つです。

ロボット市場は中長期的に拡大傾向である

人件費の高騰や労働人口の減少を背景に、産業用ロボットの市場は中長期的に拡大傾向と言われています。

製造業向けロボットのグローバル市場は、2022年は約1.5兆円、2027年は約2.2兆円の見込みで、年間成長率は約5~10%の予想です(※)。

(※)参考文献:2023年版 ワールドワイドロボット関連市場の現状と将来展望 FAロボット編、株式会社富士経済

また、近年は日々の生活の中でもロボットの活用事例が増えています。例えば、レストランで料理の提供にロボットが使われていたり、空港で大型のロボット掃除機が稼働していたりします。工場以外でのロボットの用途が広がりつつあることも、ロボット市場にとっては追い風となります。

製造業の人気が相対的に低下し、穴場市場となりつつある

リスクモンスターが2022年に発表した「2023年卒大学生業界イメージ調査」によると、最終的な志望業界ランキングの中で、「電子・電気機器」が6位、「自動車・輸送用機器」が8位、「機械・プラント」が10位と、上位5位圏外という結果になっています。

参照:マイナビキャリアサポート 「2023年卒の大学生に人気の業界は?ランキングや志望業界の傾向を紹介

しかし、製造業の年収は比較的高い部類にあります。業種別の平均給与で製造業は第5位(全14業種)となっています。

参照:All About 「【2023年最新版】業種別・年収ランキング!平均年収443万3000円

これらのデータから「年収は比較的高いが、若者から不人気である」と言えるのが製造業の現状ですが、それは逆に穴場市場であるとも言えます。

企業にもよるところは大きいですが、働き方改革の推進により、大手企業を中心に過度な残業も減らす風潮があります。

参考記事ではソフトウェア・情報処理・ネット関連や公務員の人気が高いですが、ものづくりが好きな方は、製造業で働くことを考えてみてはいかがでしょうか。

製造業でキャリアを積めば、ロボットエンジニアになることも可能です。

製造業の国内回帰により、日本国内の自動化需要が増える

ここ数年、製造業の企業が日本国内に工場を建設する事例が増えています。この背景には、円安や海外の賃金上昇があります。日本国内で製造すればコスト競争力を維持できると判断する企業が増えているのです。

参照:日経XTECH 「円安で進む製造業の国内回帰、長期視点のノウハウ蓄積に期待

日本国内に工場が増えると、工場を自動化するためのロボット導入の引き合いが増えます。実際、ロボットSIer企業の98%が、エンジニアが不足していると回答した調査結果があります。

参照:robot digest 「引き合いは好調も98%がエンジニア不足/FA・ロボットシステムインテグレータ協会

これらのデータから、ロボットをお客様の生産設備に導入することが得意なエンジニアの活躍の場は大いにあると言えるでしょう。

ロボットエンジニアに求められるスキルセット

筆者は10年以上にわたってロボット業界でハードウェアエンジニアとして働いてきました。その経験から、ロボットエンジニアに求められるスキルを紹介します。

工学系の技術・知識

ロボットアームを設計、製図するためには、材料力学や機械力学といった工学系の知識が必要です。また、ロボットコントローラの回路を設計するには電気工学の知識が、ロボットの制御ソフトウェアの設計には情報工学の知識が求められます。

このように、大学や高専などで学んだ工学系の知識はロボット開発におけるベースとなります。

ロボットの製品知識

ロボットシステムをつくるために、次のようなロボットの製品知識が必要です。

・ロボットの基本的な仕様
・ロボットの各種パラメータの設定の仕方
・ロボットのティーチング方法
・周辺機器との接続方法
・故障時の部品交換の仕方

これらの知識の多くは、ロボットエンジニアになってから研修や実務で身に付けていきます。

コミュニケーション能力

ロボットエンジニアとして仕事をする中では、多くの人と関わることになります。自部門のメンバー以外でも、例えば次のような関係者とのコミュニケーションが発生します。

・お客様
・他の部署(自身がハードウェアエンジニアの場合、ソフトウェアエンジニアや製造部門など)
・購入品のサプライヤー

このような相手とコミュニケーションを取るためには、自分の言いたいことを分かりやすく伝える能力、相手の言いたいことを適切にとらえる能力が必要です。

具体的なコミュニケーションの仕方は、実務を通じて日々実践・改善していきます。

問題解決能力

ロボットの開発中に、一見原因の分からない故障や不具合が発生することは珍しくありません。こんな時に、根気よく原因を見つけ、適切な対策を取ってトラブルを解決する能力がロボットエンジニアには求められます。

こちらもコミュニケーション能力と同様、具体的な実務を通じて日々鍛えていきます。

まとめ

この記事ではロボットエンジニアになるための方法のほか、ロボットエンジニアの仕事内容・売り手市場である3つの理由・求められるスキルセットについて解説しました。

近年の日本の製造業の国内回帰や、労働人口の減少というトレンドから、自動化設備の花形とも言えるロボット開発の需要は中長期的に高まっています。

ものづくりに興味のある方、工学系の専攻を仕事に活かしたい方にとって、ロボットエンジニアはぜひ検討したい仕事の1つであると言えるでしょう。

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