電気熱量効果を利用した柔軟な小型冷却ポンプを開発、ウェアラブルデバイス用途に最適

UCLA Soft Materials Research Laboratory

米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は2025年1月6日、同大学の研究チームが、折り曲げられる薄膜の層を用いて熱を継続的に排出する、小型冷却装置を開発したと発表した。作製したプロトタイプでは、周囲温度が約9℃(16℉)低下し、熱源温度は約30秒後に最大で約14℃(25℉)低下した。電界をかけることで材料の温度が一時的に変化する電気熱量効果を利用した技術だ。

新しい冷却装置は、直径約2.5cmの6枚のポリマーフィルムを円形に重ねた構造をしている。全体の厚さは約0.6cmで、各層の両面にカーボンナノチューブがコーティングされている。

装置の材料は強誘導性であり、電界が加わると形状が変化する。装置の電界がオンになると、重なっている層がペアとなり互いに押しつけあう。電界をオフにすると、オンのときのペアは離れて、反対側の層と押しつけあう。このプロセスが繰り返されると、アコーディオンのような動きでカスケードが自己再生し、層ごとに絶えず熱が放散する。

研究チームによると、ポリマーフィルムは積み重ねられた層ペア間で、回路を通って電荷移動する。それによりこの柔軟な冷却装置は、エアコンよりも効率的になるのだ。

従来の冷却技術は空調や冷凍機に依存しているが、これらの装置は蒸気圧縮を使っているため、大量のエネルギーを消費するだけでなく、冷媒として二酸化炭素を使用する必要がある。一方、新しく開発された冷却技術は電気のみで動くため、温室効果ガスが発生する冷媒を必要としない。ソーラーパネルなどの再生可能エネルギーで発電すれば、持続可能な装置となる。

現在、研究チームは実用化に向けた研究を続けている。薄く柔軟なフィルムでできているため、次世代ウェアラブルデバイスや、柔軟な部品を使用している電子機器の冷却に応用できると考えている。

研究成果は、『Science』誌に2024年10月31日付で公開されている。

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