- 2024-2-26
- 技術ニュース, 海外ニュース, 電気・電子系
- Advanced Science, Soojin Park, エネルギー密度, ゲルポリマー電解質, シリコン材料, ナノシリコン負極, マイクロシリコン粒子, リチウムイオン電池(LIB), 内部応力, 学術, 浦項工科大学(POSTECH), 電気自動車(EV)
浦項工科大学(POSTECH)の研究チームが、ゲルポリマー電解質の技術を用いて、シリコン材料を含むリチウムイオン電池(LIB)のエネルギー密度向上に成功した。
同研究成果は2024年1月17日、「Advanced Science」誌に掲載された。
現在の電気自動車(EV)では1回の充電で走行可能な距離が700km程度であり、航続距離を1000kmにするための研究が世界中で盛んに取り組まれている。高い蓄電容量で知られるシリコンをEV用LIBの負極材料に利用する技術が有力候補に挙げられているが、シリコンを実用化するには課題がある。
シリコンは充電時に3倍以上に膨張し、放電時には元のサイズに収縮するため、電池効率に大きな影響を与える。ナノサイズのシリコンを利用すれば膨張の問題はある程度解決されるが、ナノシリコンの製造は複雑でコスト面に問題がある。一方、マイクロサイズのシリコンの場合、コスト面では実用的であるが、膨潤収縮の問題が残る。
そこで、研究チームは、ゲルポリマー電解質を用いた手法を提案した。従来の液体電解質とは異なり、ゲル電解質は固体またはゲル状態であるため、安定性が向上する。
研究チームは、マイクロシリコン粒子とゲル電解質の間に共有結合を形成するために、電子ビームを用いた。この共有結合は、LIB作動時のマイクロシリコンの体積膨張によって生じる内部応力を分散させ、構造安定性を高める役割を果たすという。
同手法で開発した電池は、従来のナノシリコン負極で使用されていた粒径の100倍の大きさのマイクロシリコン粒子でも安定した性能を発揮した。液体電解質を用いた従来の電池と同等のイオン伝導性を示し、エネルギー密度は約40%向上した。さらに、開発された製造方法は簡単で、現在の電池製造ラインでも実現可能だという。
POSTECHのSoojin Park教授は、「マイクロシリコン負極を使用しながら、安定した電池を完成させました。本研究により、実証可能な高エネルギー密度リチウムイオン電池システムに近づきました」と説明した。