強靭性と生分解性を両立する次世代型ポリ乳酸を開発――環境循環型バイオプラスチック素材として期待 神戸大学ら

神戸大学は2024年4月10日、同大学大学院イノベーション研究科と産業技術総合研究所(産総研)、カネカが共同で、強靭性と生分解性を両立する次世代型ポリ乳酸を開発したと発表した。使用時は強靭だが、使用後は水中でも速やかに生分解される。

プラスチックの生分解性と耐久性、強靭性は、一般的にトレードオフの関係にある。その中でも、未利用な植物バイオマスを原料に作られるバイオプラスチックの代表格であるポリ乳酸は、石油由来の合成プラスチックの代替素材として注目されている。しかし、ポリ乳酸には実用面では硬い、成型しづらい、環境面では海水中では難分解という課題を抱えており、利用拡大の妨げとなっていた。

研究グループは、世界で初めて、遺伝子組換え大腸菌により、乳酸(LA)と3-ヒドロキシブタン酸(HB)の共重合体(LAHB)の合成に成功している。LAHBは、ポリ乳酸の弱点である強靭性と生分解を解消するモディファイアー(改質剤)として機能する。

従来のアカデミック用途の大腸菌を用いたLAHB生産系では、生産性が低いことが実用化の大きなハードルとなっていたため、生分解性プラスチックGreenPlanetの商用生産に成功しているカネカと共同研究を実施。産業実績のある「水素細菌」に注目し、世界で初めて、LAHBの大量生産技術を代謝経路の最適化による合成生物学的アプローチで確立した。

代謝設計と高密度培養の結果、LAHBの大量生産に成功。過去のデータと比べ、生産スコアが10倍以上となり、世界最高値となった。また、水素細菌から生産されるLAHBは、分子量100万を超える超高分子量で強靭なプラスチックだとわかった。この値は、従来のLAHBの10倍以上の増大を示し、従来技術と大きく異なり、成型加工プロセスで要求される強靭性を発揮する実用的なプラスチック素材といえる。

次世代型ポリ乳酸LAHBの超高分子量化 。
(横軸) LAとHBの組成。
(縦軸) ポリマーの分子量の関係を示したグラフ。
水素細菌の育種によって、これまでの大腸菌では実現できない超高分子量化 (分子量100万超え) に達成した。

さらに、強靭な特性を持ちながら、海水中に含まれる微生物により、常温でも速やかに生分解されることがわかった。ポリ乳酸は、常温の土壌環境中や海洋環境などの温度の低い環境下では、ほとんど生分解が進まないが、今回得られたLAHBは、強靭な特性を持ちつつ、常温でも海水中に含まれる微生物によって速やかに生分解される。

次世代型ポリ乳酸LAHBとポリ乳酸の海水中BOD試験による生分解性比較 。
兵庫県高砂港から採取した海水サンプルを利用して、LAHBとポリ乳酸の生分解性をBOD試験によって評価した結果。LAHBは、海水に暴露後、数日で生分解開始し、1週間以内に完全分解されるが、ポリ乳酸は、1ヶ月経過しても、全く分解されない。

産総研との共同研究では、超高分子量という特徴を活かし、ポリ乳酸とのブレンドによる複合材料を開発した。力学特性を調べた結果、ポリ乳酸の長所である優れた透明性を維持したまま、短所である成型加工時の垂れ性と破壊耐性が向上していた。神戸大、カネカ、産総研との最新の共同研究では、このLAHBとポリ乳酸との複合材料も、海水中で生分解された。

ポリ乳酸へのLAHBのブレンドすることによる耐衝撃性の改善
ポリ乳酸に微量LAHBを添加することで、ポリ乳酸中に微細化したLAHBが衝撃時に加わる力を緩衝することで、耐衝撃性が向上することが分かった。

ポリ乳酸へのLAHBのブレンドすることによる成型加工性の改善
ポリ乳酸に微量LAHBを添加したシートは、高温に晒しても、形状を維持した状態を保つことができる良好な成型性をもつことが分かった。

ポリ乳酸とのブレンドにより、ポリ乳酸が抱える課題を克服し、物性と生分解性という相反するニーズを両立した環境循環型のバイオプラスチック素材として期待できる。今後、生分解性を環境に応じて制御し、本来の性能や機能を発揮できる自律的プラスチック材料あるいは、ポリ乳酸の改質剤としての展開を図る。

関連情報

“強靭性”と“生分解性”を両立した次世代型ポリ乳酸の大量生産に成功 | 神戸大学ニュースサイト

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