- 2024-5-23
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- クレーター, ナノ秒レーザー, バルク, ピコ秒レーザー, フェムト秒レーザー, リム, レーザーパルス, レーザー加工, 京都大学, 京都大学エネルギー理工学研究所, 多層薄膜, 極浅構造, 研究
京都大学は2024年5月22日、同大学エネルギー理工学研究所の研究グループが、ターゲットとして、バルクの金属面にごく薄い金属膜を蒸着したものを使用し、レーザーで極薄金属膜のみを選択的に除去することで、超高品質な極浅構造を作成したと発表した。前例がないほど高品質な極浅構造となっている。
さまざまな用途で活用されている各種材料のレーザー加工は、単一のレーザーパルス照射により、ナノ秒レーザーの場合、レーザー加工痕の周囲にクレーターまたはリムと呼ばれる盛り上がりが顕著に発生する。また、ピコ秒/フェムト秒レーザーの場合でも、リムがごくわずかではあるが発生する。
レーザーパルスの多重照射は、わずかな歪みが蓄積するため、レーザー照射位置を空間的に固定または掃引しながら多数のパルスを照射し、穴またはライン状の構造を作成する場合に、ピコ秒/フェムト秒レーザー加工でも発生するリムを無視できなくなる。また、一般的なレーザーパルスには空間的な強度分布があるため、レーザー加工で平坦な底面を持つ微細構造を作成することも容易ではない。
レーザーパルスを多重照射すると、必ず照射部位の熱蓄積効果が発生してリムの発生につながる。より低いエネルギー密度(フルエンス)のレーザーパルスで加工できれば熱蓄積効果がわずかとなり、リムの発生も最小限に抑えられると考え、研究ではターゲットとして、バルクの金属ではなく、バルク金属に厚さ数10nmの極薄金属膜を蒸着したものを採用。極薄金属膜のみをフルエンスが極めて低いピコ秒レーザーパルスで選択的に除去することを試みた。
その結果、予想通り極薄金属膜のみを除去できた。さらに、ガウス型の空間強度分布を持つレーザービームを用いたにもかかわらず、ほぼ完全に平坦な底面を持つ極浅穴を作成できた。
また、レーザーパルスを空間掃引しながら多重照射してライン状の構造を作成したところ、リムがほぼない、表面粗さが1nm以下のほぼ完全に平坦な底面を持つ極浅ライン構造を作成できた。
レーザー加工はこれまでバルク金属をターゲットにした場合、ピコ秒やフェムト秒レーザーを用いても、平坦な底面を持ち、かつ、リムのない穴やライン状構造を作成できなかった。今回作成した高品質な極浅構造は、多層薄膜の構造化への応用などが期待される。