コラーゲンマイクロファイバーの高速紡糸技術を開発 北大と新田ゼラチン

北海道大学は2024年7月4日、ゼラチン・コラーゲンペプチドの製造販売を手がける新田ゼラチンと共同で、コラーゲンマイクロファイバーを高速で紡糸する技術を開発したと発表した。世界初の技術で、コラーゲンマイクロファイバーの束は、人工腱として十分な硬度と強度を持っていることを明らかにした。研究成果は同年5月21日、「Biomedical Materials」誌に掲載された。

コラーゲンマイクロファイバーの紡糸技術としては、紡糸原液をノズルに通して凝固液中に送り、繊維として巻き取る「湿式紡糸」が長年研究されてきたが、凝固過程のコラーゲンを延伸しようとすると切れてしまうという問題点があった。

このため研究グループは、コラーゲン水溶液を細い流路からエタノール浴へと押し出し、それによって形成される紐状コラーゲンゲルを乾燥してマイクロファイバー化する工程の中で、押し出し速度よりも高速で巻き取り、エタノール浴内でマイクロファイバーを伸ばすことに成功した。これによって、光沢のある乾燥コラーゲンマイクロファイバーが生成される。

従来の方法では、1時間に数十メートル紡糸するのが限界で、さらに凝固液に含まれる薬剤を除去する必要があった。しかし、今回の方法では、繊維を引っ張る度合い(延伸倍率)を高くすると、紡糸速度もアップし、条件によっては1時間に200mの紡糸も可能になる。

延伸前のコラーゲンマイクロファイバーの直径は47μmだが、22μmまで細くすることが可能で、生体内コラーゲン繊維(直径 10~20μm)に近くなる。また、延伸によって整列したコラーゲン分子がそのまま線維化(ナノフィブリル化)するため、表層から内部までコラーゲン線維が一方向に整列する。このような整列は生体内繊維に特徴的なナノ構造だが、従来の湿式紡糸では生じなかった。

さらに乾燥時のコラーゲンマイクロファイバーの弾性率は延伸倍率とともに増加し、実延伸倍率3.3倍で4.3GPaに達した。乾燥状態だけでなく、生体と同様の湿潤環境下でも極めて硬く、数百本のコラーゲンマイクロファイバーを束にしたテスト人工腱は、適切な化学処理を施すことで、人間の膝前十字靭帯の3分の1から2分の1に達する弾性率と破断強度を示した。

生成したコラーゲンマイクロファイバーを用いた人工腱の移植が実現する可能性があり、研究グループはコラーゲンマイクロファイバーを基材とした医療機器の開発につながると期待を寄せている。

関連情報

新着情報: コラーゲン繊維に類似したコラーゲンマイクロファイバーを高速で紡糸する技術を開発~人工腱など様々な医療機器開発への貢献に期待~(産学・地域協働推進機構  産学連携推進本部)

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る