農作物収穫用に「包み込む」ロボットハンドを改良 北陸先端科学技術大学院大学

北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は2024年9月26日、同大学が前年に開発した、物を包み込むようにつかむロボットハンドの非線形解析を行い、さまざまな種類の農産物を収穫できるよう改良したと発表した。

同大学は23年にバラの花のような形で、物を包み込むようにしてつかむロボットハンド「ROSEハンド」を開発した。

ROSEハンドは薄く柔らかい弾性体である内側と外側の2枚の層で形成されている。2つの層の間には空間があり、内側の層を回転させることで層が変形して本体の内部に「しわ」が生じ、中央の空間が徐々に収縮して対象物を優しくつかむ。

今回は、ROSEハンドのつかむメカニズムを最適化するため、柔らかい素材の複雑な非線形変形をシミュレーションできるソフトウェア「Abaqus」で、内部の動きを解析した。その結果、高さや直径、厚さとつかむ機能との間に相関関係があることが明らかになった。この発見によって、ROSEハンドの形状設計を最適化することで、全体的な性能が向上し、研究グループでは、従来のロボットハンドでは難しかったさまざまなタスクを検証した。

検証では農作物のようなデリケートなものも扱えるようになり、収穫作業の省人化や負担軽減への効果が期待できることが判明した。実際にキノコやイチゴの収穫を行ったが、いずれも作物を確実につかみ、作物を傷つけずに収穫できた。

研究グループは「世界で初めて弾性体の持つ『しわ』の現象を把持機能へ応用したことで、『しわ』を引き起こす『たわみ』は望ましくないという、一般的なロボット設計者が抱いている考えを変えることができる」とした上で、「ROSEハンドは収穫作業の効率を向上させるだけでなく、高齢化による労働力不足の解決策につながることが期待できる」としている。

研究成果は2024年9月23日、ロボティクス分野の主要ジャーナル「International Journal of Robotics Research」に掲載された。

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ソフトロボットハンドを農業の未来に | JAIST 北陸先端科学技術大学院大学

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