使用済みリチウムイオンバッテリーの性能を元に戻すリサイクル技術の開発

Credit: KOREA INSTITUTE OF ENERGY RESEARCH

韓国の国家科学技術研究会(NST)は2024年11月13日、韓国エネルギー技術研究院(KIER)の研究チームが、使用済みリチウムイオンバッテリー(LIB)から正極材料をリサイクルする、環境に優しく費用対効果の高い技術を開発したと発表した。

電気自動車(EV)やモバイル機器の増加に伴い、使用済みLIBの管理は世界的に重要な課題となっている。2040年までに廃車となるEVは4000万台を超えると予想されており、廃棄LIBが急増する見込みだ。LIBに含まれる金属は土壌や水質を汚染するため、LIBのリサイクルシステムが必要とされている。

従来のリサイクル技術では、使用済みLIBを粉砕し、化学処理によってリチウムやニッケル、コバルトのような有価金属を抽出するのが一般的である。しかし、従来の処理方法は、高濃度の化学薬品と高温環境を要し、多くの廃水とエネルギー消費を伴う。

研究チームは、従来のリサイクル方法の課題を克服する、使用済みLIBの正極材料を単純な方法で直接リサイクルする技術を開発した。同手法は、常温常圧下で修復溶液に浸すことで、使用済み正極を元の状態に戻し、リチウムイオンを効率的に補充できる。

同手法は、修復溶液内で2つの異なる材料が接触したときに、一方の材料が他方の材料を選択的に保護する電解腐食現象を利用した技術だ。使用済みLIBの集電体電極であるアルミニウムが修復溶液中の臭素イオンと反応して電解腐食を起こす。反応中、電子がアルミニウムから使用済み正極に移動し、還元反応を起こすとともに、電気的中性を保つために修復溶液中のリチウムイオンが正極に補充され、正極を元の状態に戻す。

研究チームは電気化学的性能テストを実施し、修復された正極が新しい材料と同等の容量であることを確認した。さらに、同手法は、使用済みLIBの分解を必要とする従来のリサイクル方法と異なり、修復反応を電池セル内で起こせるため、リサイクル過程を大幅に効率化できる。

KIERの上級研究員Jung-Je Woo博士は、「廃棄されたEVバッテリーを直接リサイクルする技術は、炭素排出量を大幅に削減し、循環型資源経済を確立する大きな可能性を持っています」と説明した。

同研究成果は2024年9月27日、『Advanced Energy Materials』誌に掲載された。

関連情報

Developing advanced recycling technology to restore spent battery cathode materials | EurekAlert!

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