600℃以上でも動作可能なメモリデバイスを開発 米ミシガン大学

Image credit: Brenda Ahearn, Michigan Engineering

米ミシガン大学は2024年12月9日、同大学の研究チームが600℃を超える環境でも動作可能な、新しいメモリデバイスを開発したと発表した。このデバイスは電子ではなく酸素イオンの移動に基づいて動作する。

従来のシリコンベースの電子デバイスは、温度上昇に伴いキャリア濃度が増加するため、通常150℃が限界とされている。この制限により、高温環境での応用、例えば宇宙航空や自動車エンジン(150℃~600℃)、金星のような惑星探査(550℃)、深井戸からの石油や地熱エネルギーの採取(300℃~600℃)などが困難になっている。

研究チームはサンディア国立研究所と共同で、600℃を超える温度でも24時間以上情報を保存でき、書き換えもできる固体メモリデバイスを開発した。この耐熱性メモリは、電子ではなく酸素イオンが移動することで動作する仕組みだ。

酸素イオンは、メモリ内の半導体タンタル酸化物層と金属タンタル層の間を、他の電荷が層間を移動しないよう、障壁のような役割を果たす固体電解質を介して移動する。酸素イオンは、3つのプラチナ電極により制御され、酸素が酸化タンタル層に引き込まれるか、または押し出されるかが決まる。

タンタル酸化物層から酸素原子が移動すると、小さな金属タンタル領域が残る。同時に、障壁の反対側では酸化タンタル層が金属タンタル層を覆う形になる。このタンタルと酸化タンタルの層は油と水のように混ざり合わないため、電圧を切り替えるまで元の状態に戻ることはない。

タンタル酸化物の酸素含有量に応じて、絶縁体または導体として機能し、材料がデジタルの0と1を表す2つの異なる電圧状態を切り替えられる。酸素勾配をより細かく制御することで、単純な2進数ではなく、100を超える抵抗状態でメモリ内で計算できるようになる。

しかし、極端な高温環境でない場合には制限がある。このデバイスは、250℃以上でしか新しい情報を書き込めない。低温環境で動作するために、デバイスにヒーターを取り付けるなどの解決策が考えられている。

同大学の助教授であるLi氏は、「このデバイスは1bitを保持する能力を持ち、他の高温メモリの実証実験と同程度の性能を示している。さらなる開発を進めれば、理論的にはMBやGB規模のデータを保持できるようになる可能性がある」と述べている。

研究成果は、2024年12月3日付で「Device」誌にて発表された。

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