プラズマビームの挙動を解析して宇宙ロケット用電動スラスターの性能を高める研究

Courtesy of NASA-JPL/CalTech

米ヴァージニア大学、南カリフォルニア大学の研究者らは、2025年1月2日、プラズマビーム内の電子の運動挙動に関する新たな知見を発表した。これは、将来の宇宙ミッションにとって重要な技術である、電気推進(EP)スラスターの改善につながる成果だ。

EPは、中性ガス(通常はキセノン)をイオン化し、電界を利用して生じたイオンを加速することで機能する。イオンは高速プラズマビームを形成し、宇宙船を前進させる。

EPスラスターが放出するプラズマビーム中の電子は、高速で移動する微小な荷電粒子だ。その動きとエネルギーは、EPスラスターが放出する「プルーム」と呼ばれる流体現象の巨視的ダイナミクスを決定する上で重要な役割を果たす。本研究の主な目的は、この微視的な相互作用の研究で、放出されるプラズマのプルームと、宇宙船自身の相互作用を理解することだ。

EPスラスターは数年に渡るミッションで使用するため、長時間スムーズかつ安定的に作動する必要がある。EPシステムの燃料効率は化学ロケットに比べると非常に高いため、少ない燃料でより遠くまで移動できる。このようなシステムは、多くの場合、ソーラーパネルや小型原子炉で駆動されるため、NASAのアルテミス計画のような長期ミッションに理想的だと、研究者らは述べている。

但し、スラスターから放出されるプルームは単なる排気ではなく、推進システム全体の生命線だ。その特性を十分に理解していないと、プルームは予期せぬ問題を引き起こす可能性がある。粒子によっては宇宙船に向かって逆流し、太陽電池パネルや通信アンテナなどの重要な部品を損傷する場合がある。

研究者らは、プラズマの挙動を把握するためにスーパーコンピューターを利用したが、その際、ブラソフシミュレーションと呼ばれるノイズのない高度な計算方法を採用した。EPビーム中の電子の挙動は、温度や速度によって異なる。個別のパターンを形成するため、全体像を混乱させるデータを除外しながら、電子の複雑な相互作用を正確に見ることが鍵となる。

今回の研究で、研究者らはビームの挙動を発見した。ビーム方向の電子の速度分布は、ほぼマクスウェル型(ベルカーブ型)を構成し、ビームの横断方向では、トップハット型であった。さらに、EPプラズマビーム中を熱エネルギーが移動する主要な経路である電子熱流束が、主にビーム方向に沿って発生することを発見した。

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New UVA Professor’s Research May Boost Next-Generation Space Rockets | University of Virginia School of Engineering and Applied Science

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