200サイクルの充放電後に81%の容量を保持するナトリウム硫黄電池

Credit: Energy Materials and Devices, Tsinghua University Press

中国の福建師範大学の研究チームは、2024年12月31日付の『Energy Materials and Devices』誌で、新方式のナトリウム硫黄(Na-S)電池を発表した。この電池は、200回の充放電サイクルを経た後、初期容量の81.4%を保持する性能を持つ。

ナトリウム硫黄電池は、その高いエネルギー密度と費用対効果から大規模エネルギー貯蔵手段の有力な候補だ。しかし、実用化を妨げている技術課題もある。主な課題として、硫黄およびそのナトリウムポリスルフィド誘導体固有の低い電気伝導性や、ナトリウムポリスルフィドの溶解とシャトル効果による容量と効率の低下が挙げられる。

さらに、これらの問題を深刻にするのが、ナトリウムのデンドライトを形成することによる安全上のリスクと、電池の充放電サイクルの制限だ。

これらの課題を克服するために研究者たちは電極/電解質界面を安定化させ、ポリスルフィドの移動を効果的に制御できる、先進的な電解質の開発に注力してきた。

研究チームは、電極/電解質界面を効果的に安定化させ、室温ナトリウム硫黄電池におけるポリスルフィドのシャトル効果を抑制する、二塩系の準固体高分子電解質(DS-QSPE)を提案している。この電解質は「in situ重合」により、ナトリウム硫黄電池の性能を大幅に向上させて実用化を促進する。

今回開発したDS-QSPEは、イオン伝導度が25℃で4.8×10-4 S・cm-1、ナトリウムイオン移動度0.73を達成し、電池の電気化学的性能を大幅に向上させた。この電解質は、硫化ポリアクリロニトリル(SPAN)正極内で相互接続ネットワークを形成し、電気化学反応に安定したシームレスな界面をつくる。

研究チームによれば、この構造により、効率的で均一なイオン輸送を促進するだけでなく、0.2A・g-1で200サイクル使用後、約327.4mAh・g-1の高容量を維持し、初期容量の81.4%を保持できた。

また、分子動力学シミュレーション、量子力学に基づく計算手法である密度汎関数理論により、DS-QSPEは、ポリジオキソラン鎖へのナトリウムイオンの配位を高め、ナトリウム塩の解離を促進することで機能することが判明した。これは、ポリスルフィドのシャトル効果を緩和し、電極/電解質界面を安定化させ、最終的に電池の長寿命化に寄与しているという。

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