流体力学とは?身近な例や使う場面を簡単に解説!

「流体力学」は、機械工学を学ぶ上で欠かせない学問です。「機械力学」「材料力学」「熱力学」と合わせて4大力学と呼ばれています。その4大力学の中でも、流体力学は専門的で難しいと感じる人が多い分野です。しかし、私たち人類は昔から流体エネルギーを活用しながら、生活してきたのです。

この記事では、流体力学についての概要や身近な例、使う場面などを解説します。

流体力学とは?

流体力学とは、流体(液体や気体)の運動、およびそこに働く力の性質などを研究する力学の一分野です。

流体力学の歴史は古く、古代ギリシアのアルキメデスが「アルキメデスの原理」を発見し、1653年にブレーズ・パスカルが「パスカルの原理」を、1662年にはロバート・ボイルが「ボイルの法則」を見出しました。これらは、流体力学の中でも静止状態の流体を取り扱う「流体静力学」に分類されます。

その後、ニュートン力学を流体に応用して運動状態の流体を取り扱う「流体動力学」も誕生し、18世紀には非粘性流体の研究が、ダニエル・ベルヌーイ、レオンハルト・オイラー、ジョゼフ=ルイ・ラグランジュらによってなされました。

さらに19世紀に入ると、アンリ・ナビエ、ジョージ・ガブリエル・ストークスらが粘性流体の研究に取り組み、19世紀末にはオズボーン・レイノルズが乱流の研究を進め、現代の流体力学に至ります。

このように長い時間をかけて発展してきた流体力学は、いまや私たちの生活に欠かせません。例えば、水力発電や風力発電などは、タービンを回すために水や空気の流体力学が使われています。パイプラインに石油や天然ガス、水などを安全に通せるのも流体力学あってのものです。

また、航空機や船舶、電車、自動車などの乗り物にも、高速化や燃費改善、騒音防止のために流体力学が応用されています。初期の新幹線のノーズは団子鼻のようでしたが、流体力学の応用が進むにつれて、ノーズの長さや形も進化を続けています。

他にも、鋳造や射出成形、油圧装置、潤滑装置など、流体力学はあらゆるところで活用されています。

流体力学が使われる場面は?

流体力学が使われる場面について、以下の3つに分けて解説します。

・流体の身近な例は?
・流体の利用方法
・流体機械と作動流体とは

それぞれ見ていきましょう。

流体の身近な例は?

私たちは、流体(液体や気体)に囲まれて生活しています。液体は、海や川などの自然として存在するほか、私たち人間の体も、成人男性であれば体重の約60%が血液や体液のような液体で構成されています。また、気体である空気は、私たちが呼吸をするのに必要不可欠な存在です。流体力学は、私たちにとって当たり前に存在している身近なものを扱う学問と言えるでしょう。

流体の利用方法

私たちは昔から、流体のエネルギーをうまく利用して生きてきました。

例えば、今では蕎麦屋のオブジェ的な存在となっている水車は、もとは水の流体エネルギーを石臼の機械的なエネルギーに変えて蕎麦を挽くためのものです。風車も同じように、風の流体エネルギーを製粉や灌漑(かんがい)に利用してきました。

さらに産業革命により、蒸気の流体エネルギーを利用する蒸気機関が普及するようになります。現代においても火力発電や原子力発電では、蒸気の流体エネルギーを利用してタービンを回しています。

流体機械と作動流体とは

流体機械とは、流体エネルギーを利用する、または生み出す機械のことです。そこで使われる流体を作動流体と呼び、水や油、空気、蒸気などが挙げられます。

水車や風車、タービンのほか、油圧シリンダー、油圧モーター、空圧シリンダー、空圧モーター、ポンプ、圧縮機、送風機など、さまざまな流体機械があります。

例えば、油圧シリンダーは「パスカルの原理」を応用したもので、小さな力で大きなものを動かすために、さまざまなところで使われています。

一番分かりやすいのは油圧ジャッキで、人力で自動車などを持ち上げられるのは油圧シリンダーのおかげです。他にもショベルカーやブルドーザーなどの建設機械、ダンプトラックの荷台、自動車のブレーキやサスペンションなどにも使われています。

流体力学で何が分かるの?

流体力学を使えば分かることを、以下の2つに分けて解説します。

・流体力学の目的
・流体力学で使う基本的な方程式は?

それぞれ見ていきましょう。

流体力学の目的

流体力学は、運動方程式を用いて流体運動を解析することが目的です。流体力学では「流体(液体や気体)」を取り扱います。「圧力」「密度」「X方向の流速」「Y方向の流速」「Z方向の流速」の5つの未知数を求め、下記の運動方程式を解くことで、流体運動を解析できます。

流体力学で使う基本的な方程式は?

流体には、ニュートン力学における運動方程式や保存則が適用可能です。ニュートンの運動方程式「F=ma」を流体に当てはめると「流体にかかる力=流体の質量(密度)×流体の加速度」になります。この運動方程式を基本にして、流体力学では圧力や粘性力、重力などの外力を加味した「ナビエ・ストークス方程式」が用いられます。

圧縮性・非圧縮性とは?どう求める?

固体とは違い、流体力学で取り扱う流体(液体や気体)は圧縮性、非圧縮性の考慮が必要です。

一般的に、水や油のような液体は圧力を加えてもほとんど体積や密度が変化しないため「非圧縮性流体」と呼ばれます。それに対して空気や蒸気などの気体は、圧力を加えると体積が小さくなり密度が大きくなるため「圧縮性流体」と呼ばれます。ただし、厳密には、同じ流体でも圧縮性か非圧縮性かは、流速によって判断します。

その判断基準となるのが「マッハ数」で、「Ma(マッハ数)=v(流速)/a(音速)」で計算できます。マッハ数が0.3以下であれば密度変化が5%以内に収まるとされるため、気体でも非圧縮性流体とみなすことが可能です。例えば、空気中の音速(1気圧、20℃)が約340m/sとして、流速が約100m/s以下であればマッハ数が0.3以下となり、空気でも非圧縮性流体として取り扱えます。

非圧縮性流体においては密度を無視できるため、前述の「流体力学の目的」で挙げた、流体運動の解析に必要な5つの未知数から「密度」が除かれます。そして、残り4つの未知数を求めるためには、「X方向の運動方程式」「Y方向の運動方程式」「Z方向の運動方程式」「連続の式(質量保存則)」の4つの方程式が必要です。この4つの方程式を連立させることで圧力や流速を求めます。

流体力学を活かした仕事とは

ここまで、流体力学について解説してきました。では、そんな流体力学の知識を活かすことのできる職種にはどのようなものがあるでしょうか?

主な分野としては、自動車業界をはじめとする機械の製造業が挙げられます。液体や気体などの流体と関わる製品を設計する際に、流体力学の知識が必要になるためです。例えば、自動車をつくるには、燃料や冷却水といった流体が関わる動力機関の動作や、車体にかかる空気抵抗など、あらゆる部分で流体力学の計算が必要になります。同様に、飛行機や船舶、鉄道などにも流体力学の知識は役立ちます。その他にも多様な大型機械やインフラ、例えば水道・ガスの配管にまで流体力学は関わってきます。

具体的な仕事内容としては、直接的に知識を活かすことができる設計・開発はもちろん、品質・生産管理や整備まで、幅広く可能性があるでしょう。

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まとめ

流体力学についての概要や身近な例、使う場面などを解説しました。

流体力学を勉強しようとすると難しい方程式が並んでいるため、私たちの生活にはなじみのない印象を受けます。しかし、私たち人類は昔から水車や風車などを利用して、流体エネルギーを活用してきました。

そして、今でも流体力学は応用され続けています。流体力学を意識して生活してみると、機械や配管、乗り物など、身の回りのあらゆるところで流体力学が使われていることに、驚かれることでしょう。

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