低分子系添加物により、ペロブスカイト太陽電池の課題である耐久性を向上させる研究

/Image credit: Carlos A. Figueroa Morales, Gong Lab, University of Michigan.

ミシガン大学の研究チームが、ペロブスカイト材料における結晶格子欠陥を不動態化して、耐熱性などの耐久性を向上できる低分子系添加物を考案した。配位数と分子量の高い低分子系添加物の方が、欠陥不動態化に優れることを見出した。次世代太陽電池として期待を集めるペロブスカイト材料の課題である耐久性を向上し、ペロブスカイト太陽電池の総合的なコスト効率を高めるとともに、シリコンベースの半導体と組み合わせて、 理論的最大効率を実現するタンデム太陽電池も作成できると期待している。研究成果が、2024年1月9日に『Matter』誌に公開されている。

2009年に日本の宮坂力博士によって開発されたペロブスカイト半導体は、簡便な塗布プロセスなど安価な溶液法で作製できるうえ、22 %を超える高い光電変換効率を持ち、次世代の太陽電池材料として高い注目を集めている。ところがペロブスカイト材料には、熱や湿気、空気に曝されると劣化してしまい、電池寿命が短くなるという課題がある。この低い耐久性の原因となっているのが、ペロブスカイト材料の表面や粒界にある結晶格子欠陥であり、外的環境要因に反応して電荷の移動を阻害するなど性能劣化を加速する。これに対し、添加物によって格子欠陥を不動態化する研究が進められており、その中でルイス塩基をベースとした低分子系添加物による不動態化が注目されるようになった。だがこれらの添加物は、低分子量であるため拡散速度が高く、また低配位数であることから格子欠陥の不動態化、電池としての安定化効果は小さいのが実情だ。

研究チームは、分子量と配位数を高めた「バルキーな(嵩高い)」分子の可能性に注目し、サイズや結晶構造の異なる3種の分子添加物を設計して、ハロゲン化ペロブスカイト薄膜の安定性に与える効果について研究した。その結果、分子量と配位数の高い分子は、ペロブスカイト結晶と相互作用する結合サイトを多く持っており、格子欠陥と結合して欠陥の成長を阻止し高い不動態化効果を持つことを発見した。また、最もバルキーな分子が製造時に結晶粒径を増大させることで、結晶粒界を少なくして結晶粒界に生じ易い欠陥生成サイトを低減する効果を持つことも明らかにした。欠陥生成を抑制するとともに欠陥を不動態化できることから、ペロブスカイト太陽電池の総合的な光電子特性および熱的安定性が向上することが確認された。バルキーな添加物を含むペロブスカイト薄膜を200℃以上に加熱した場合でも、スレートブラックの色を有する薄膜を維持して格子欠陥が低減されることが示された。

「この発見によって、時間のかかるトライエンドエラーに頼ることなく、ペロブスカイト太陽電池の寿命を増大させる最適な分子を系統的に設計できるようになる。さまざまなペロブスカイト材料系における設計指針が確立され、太陽電池や発光デバイス、光検出器の寿命を向上し、2~4倍の総合的な低コスト化を実現できる」と、研究チームは期待している。

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