世界最高の臨界電流密度を持つ鉄系超伝導薄膜を開発 東工大

東京工業大学と成蹊大学などの研究グループは2024年7月19日、世界最高の臨界電流密度を持つ鉄系超伝導材料SmFeAsO1-xHx薄膜を開発したと発表した。この超伝導材料の作成方法を使えば、他の超伝導材料でも飛躍的に臨界電流密度を向上できることも確認し、幅広い超伝導材料の臨界電流密度向上に応用できると研究グループは期待を寄せている。

研究グループは、SmFeAsO1-xHx薄膜を作製する際に注入する元素として、従来のフッ素ではなく水素を用いることでキャリア(電子)密度を制御。これによって3倍以上の電子の注入に成功し、対破壊電流密度や臨界電流密度(外部磁場なし)を飛躍的に向上させることに成功した。さらに、プロトンビームを照射して高密度な磁束ピン止め点導入に成功した結果、鉄系超伝導材料の中で世界最高の臨界電流密度を得た。

こうして作製したSmFeAsO1-xHx薄膜は、液体ヘリウム沸点温度(−269度)で25テスラの高磁場下でも、鉄系超伝導材料の中で最も高い磁場中臨界電流密度を達成した。これは超伝導材料の中で最も臨界電流密度が高い、銅酸化物高温超伝導材料YBa2Cu3Oy薄膜に匹敵する特性であった。

さらに、異なる超伝導材料であるBaFe2(As1–xPx)2薄膜やYBa2Cu3Oy薄膜でも、同様の作製手法が臨界電流密度の向上に有効なのかを検証。その結果、飛躍的な臨界電流密度の向上に成功した。このことから、今後、幅広い超伝導材料で臨界電流密度の向上に貢献する可能性がある。

今回、高臨界電流密度を持つSmFeAsO1-xHx薄膜の作製に成功したことで、液体ヘリウムを冷媒とした大型ハドロン衝突型加速器や核融合発電のほか、医療用MRI装置やリニアモーターカーなど幅広い装置への応用が期待される。

今回の研究成果は同月18日、英国科学誌Natureの姉妹論文誌「Nature Materials」にオンライン掲載された。

関連情報

新材料設計指針により世界最高の臨界電流密度を有する鉄系超伝導薄膜を創製 銅酸化物高温超伝導薄膜に匹敵する磁場中臨界電流密度を達成 | 東工大ニュース | 東京工業大学

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