- 2025-2-6
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米ヒューストン大学のカネパ研究所をメンバーとする研究チームは、2024年12月20日、ナトリウムイオン電池のエネルギー性能を向上させる新材料の開発成果を発表した。この成果は、学術誌『Nature Materials』に掲載された。
現在市場で主流のリチウムイオン電池は、スマートフォンやノートパソコンから電気自動車に至るまで、多様な機器や用途で使用されている。しかし、リチウムは比較的希少かつ高価である上に調達が困難で、採掘地には地政学的な観点でリスクがあり、将来的な材料入手への懸念が高まっている。
これに対し、ナトリウムの価格はリチウムの約50分の1と安く、海水からも採取できる。このことから、ナトリウムは大規模なエネルギー貯蔵のための、より持続可能な選択肢になると研究チームは主張している。
今回開発した新素材は、化学式「NaxV2(PO4)3」で表されるリン酸バナジウムナトリウムだ。同素材は、1kgあたりに蓄えられるエネルギー量を表す「エネルギー密度」を15%以上向上させ、ナトリウムイオン電池の性能を改善する。具体的には、従来のナトリウムイオン電池の396Wh/kgに比べて458Wh/kgと高く、この技術がリチウムイオン電池の競合技術になり得ると期待されている。
NaxV2(PO4)3は、「ナトリウム超イオン伝導体」またはNaSICONと呼ばれるグループの一部であり、充放電中にナトリウムイオンが電池の内外をスムーズに移動できる。
研究チームによると、新素材はナトリウムを扱うユニークな方法として、ナトリウムイオンを放出したり取り込んだりしても安定した状態の単相系として機能する。これにより、NaSICONは充放電中も安定した状態を保ちながら、ナトリウム金属に対して3.7Vの連続電圧を供給した。これは、既存の素材の3.37Vを上回っている。
この差は小さく見えるかもしれないが、電池のエネルギー密度を大幅に向上させた鍵は、バナジウムにある。バナジウムは、複数の安定した状態で存在できる特性があり、より多くのエネルギーを保持/放出できると、研究チームは付け加えている。
さらに、NaxV2(PO4)3の合成方法は、同様の化学的性質を持つ他の材料にも応用できることから、高度なエネルギー貯蔵技術に新たな可能性をもたらすという。