- 2018-6-18
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- SACLA, SiC MOSFET, X線自由電子レーザー, シリコンカーバイド, チョッパーユニット, パルス電源, パワー半導体, 理化学研究所, 理研, 高輝度光科学研究センター
理化学研究所(理研)は2018年6月16日、高輝度光科学研究センター、ニチコンと共同で、パワー半導体デバイス「SiC MOSFET」を用いた、コンパクトなパルス電源を開発したと発表した。同電源は、高出力と高い安定性を両立し、出力電流の方向や大きさを広い範囲で変えられるという。
パワー半導体によるシステム性能の大幅な改善が、幅広い分野において期待されている。一方、理研では、X線レーザーを利用する研究の拡大という背景のもと、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAのビームライン数を増やし、利用時間を拡大することが喫緊の課題となっていた。
そこで研究グループは、耐電圧が高く、100kHzを超える速いスイッチングスピードで大電流を制御できるSiC(シリコンカーバイド) MOSFET素子に着目。XFELのビームラインをパルスごとに切り替えるための、電子ビーム振り分け電磁石用電源に適用した。
開発した電源では、SiC MOSFET素子から構成されるチョッパーユニットを2直列5並列の主回路に組み上げることで、高出力と高い安定性を実現。さらに、出力電流が少ないときに稼働するSiC MOSFETのユニット数を減らすとともに、バイパス回路に余剰電流を流すことで常に一定量以上の制御電流を確保するシーケンスを実装した。また、低出力電流時における安定性も実現している。
研究グループは、この成果により、世界中で建設が進められている、XFEL施設における利用実験時間の拡大や効率化に貢献することが期待できるとしている。また、開発したパルス電源は、あらゆる機器に適用が可能であり、任意の電流や電圧パターンを利用する機器の運転に適用することで、さまざまな生産システムの高度化にも貢献できるとしている。