オムロンは2016年6月2日、電子回路をインクジェット印刷で樹脂製の成形品に形成する技術を世界で初めて開発したと発表した。同技術により、電子部品の実装にプリント基板が不要となるという。
同社が今回開発した技術は、電子部品を樹脂製成形品の定位置に誤差±50μm以内の精度で挿入し、電子部品の電極部を樹脂の表面に露出させた上で、回路パターンを樹脂の表面にインクジェット印刷で塗布して電子回路を形成する。インクジェット印刷用のインクには通常、樹脂へ塗布するとはじけたり濡れ広がったりするという欠点がある。だが今回の技術では、液体が浸透しない材質(樹脂)へも回路パターンを描画できる。
同技術では、0.2mmや0.1mmのチップコンデンサ、チップ抵抗、IC、センサー、LED、LCD、金属端子を含む電子部品を、ABS樹脂やポリカーボネートなどの樹脂製成形品へ埋設できる。平面状のプリント基板を用いる必要がないため、曲面や立体面上へ電子回路を形成することも可能だ。
また、プリント基板へのハンダ付け、ひいては電子部品の耐熱対策が不要になったため、電子部品の小型化と高密度実装に貢献する。プリント基板製造工程における洗浄水の消費や、ハンダ付けのための熱処理工程も不要となり、電力消費や環境負荷を低減できる。さらに、製造に用いる加工装置を実装機、射出成形機、インクジェットプリンタの3種に抑えられるため、多品種少量生産や需要変動に対応可能な製造ラインを構成するのに役立つという。