3Dプリント技術で新素材を作製し、ナトリウムイオン電池最高性能を達成 東北大学ら

東北大学材料科学高等研究所は2022年7月14日、同大学学際科学フロンティア研究所および多元物質科学研究所、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ジョンズホプキンス大学と共同で、ナトリウムイオン電池の負極に適したハードカーボンからなる連続周期構造の「カーボンマイクロラティス」を3Dプリンターで作製したと発表した。電極面積当たり容量が従来比4倍と世界最高レベルの性能を達成している。

研究グループは、3Dプリント技術を用いてナトリウムイオン電池の性能向上を図った。光造形3Dプリンターの中でも安価な液晶マスク型を採用し、連続的な3次元構造を有する光硬化性樹脂の前駆体を作製して、真空下1000℃で熱処理。その結果、設計した構造を維持したまま60%収縮し、100~300μmの構造単位からなるカーボンマイクロラティスを得られた。

ナトリウムイオン電池負極としてこれらを用いると、充放電特性は構造単位が微細になるほど向上した。これまでの粉末ペレット電極と比べると、最も緻密な構造を有するマイクロラティスは、単位面積当たり容量が4倍まで向上。世界最高レベルの性能を達成した。

今回作製したカーボンマイクロラティスは、黒鉛のような結晶性を持たないハードカーボンと呼ばれる構造を持ち、ナトリウムイオンの充放電との相性が、多くの金属イオン電池候補の中でも優れている。この特性を用いて、電極を充放電の各段階で回収、洗浄し、ハードカーボン内部の構造にナトリウムイオンの侵入が与える影響をX線回折法により可視化することに成功している。

化石燃料からのエネルギー転換が求められている中、再生エネルギーを貯蔵するデバイスに必要な資源の確保が新たな課題となっている。リチウムイオン電池が現在最も普及している蓄電デバイスとなっているが、生産にはリチウムやコバルトなど、産出される地域や量が限られる資源が必要となる。

また、リチウムイオン電池は、リチウムの主原料である炭酸リチウムの価格が高騰しており、化石燃料脱却の新たな不安材料となっている。このため、次世代を担う蓄電デバイスとして、リチウム以外の金属イオンを用いる研究がされている。

海に囲まれた日本は、資源確保の観点から、海水中の豊富な資源を使用できるナトリウムイオン電池について優位性がある。しかし、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度や出力密度は、リチウムイオン電池に劣っているため、さらなる高性能化には全く新しい材料の開発が強く望まれているとう背景があった。

今後、数値シミュレーションを用いた周期構造の最適化により、さらなる高性能化が期待される。光造形方式は、樹脂の分子構造の改良や、他の材料との混合でハードカーボン以外の材料にも対応できる可能性がある。陽極もマイクロラティス化したナトリウムイオン電池の開発や、他の金属イオン電池に適したマイクロラティス電極の開発につながることが考えられる。

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