深紫外線を透過する透明な薄膜トランジスタを作製――殺菌灯照射下でも動作可能な新バイオセンサーへの応用に期待 北海道大学

北海道大学は2020年6月16日、同大学電子科学研究所の太田裕道教授、ジョ・ヘジュン助教らの研究チームが、深紫外線を透過する透明な薄膜トランジスタを作製したと発表した。殺菌灯の深紫外線を照射した状態でも動作する新しいバイオセンサーの原型になると期待される。

現在、ウイルスや細菌などの生体分子を検出するバイオセンサーには、半導体シリコンを活性層とするトランジスタが利用されている。バイオセンサーからウイルスなどを除去するためには、殺菌灯などの深紫外線を照射する必要があるが、シリコンのバンドギャップが小さい(1.1eV)ため、トランジスタ動作中に殺菌灯を照射すると、シリコンの電子が光励起され、動作が不安定になるという問題があった。

今回、バンドギャップが4.6eVと大きく、高い導電率(3000S/cm)を示す酸化物半導体スズ酸ストロンチウム(SrSnO3)を活性層とした薄膜トランジスタを、パルスレーザー堆積法と呼ばれる薄膜作製技術を用いて作製した。

スズ酸ストロンチウムを活性層とする薄膜トランジスタの模式図(活性層:膜厚28µm、ゲート絶縁体薄膜:膜厚300µm、比誘電率12。チャネル長/チャネル幅=800µm/400µm)

作製された薄膜トランジスタは、ゲート電圧の増加に伴ってドレイン電流が増加するnチャネルのトランジスタ動作を示した。また、ドレイン電圧の増加に伴ってドレイン電流の増加および電流飽和がみられ、一般的な電界効果トランジスタに相当することが確認された。

電極を含まない状態の薄膜トランジスタは、可視光/近赤外線領域で80%以上の透過率および約15%の反射率を示した。DNAの光吸収波長である260nmでも、透過率が50%を超えることが確認されている。

従来の半導体シリコンを活性層とするトランジスタと異なり、今回開発された薄膜トランジスタは殺菌灯照射下でも安定して動作する。殺菌灯照射前後でのDNAのトランジスタに及ぼす影響を調べるバイオセンサーなどへの応用が期待される。

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