NTNは2021年8月18日、スラスト面に設けた特殊潤滑溝によりトルクを従来品比で30%低減した自動車電動ウォータポンプ用「低トルク樹脂軸受」を開発したと発表した。軸受のスラスト面の接触部に冷却水が入り込みやすくなっており、従来品と同等以上の耐久性を維持しながらトルクを30%低減している。
電動ウォータポンプ用軸受には、PPS樹脂などを使った樹脂軸受やカーボン軸受など小型/軽量かつ耐薬品性を有するすべり軸受が使用されているが、いずれの軸受も燃費向上を目的にさらなる低トルク化が求められている。そこで、HEVやEV、FCVなどの電動車の冷却システムに使用される電動ウォータポンプ向けに低トルク樹脂軸受を開発した。
今回開発した低トルク樹脂軸受は、固体潤滑剤などの独自配合により、水中使用時に優れた低摩擦/低摩耗特性を発揮する同社製のPPS樹脂材料を使用し、スラスト面には特殊潤滑溝を形成している。潤滑溝はこれまで矩形溝を形成していたが、開発品の特殊潤滑溝には溝が軸受の反回転方向に徐々に浅くなる勾配を設けている。
このため、軸受回転時に冷却水を反回転方向に押し込み、動圧効果による圧力を発生させる設計となっており、冷却水が軸受のスラスト面の接触部に入り込みやすくなっている。これにより、従来品と同等以上の耐久性を維持しながらトルクを30%低減することに成功したという。
また、カーボン軸受に発生しやすいクラック(割れや欠け)の心配がなく、水中での優れた耐摩耗性を持つ。カーボン軸受からの置き換えもできるため、電動ウォータポンプ用途でのさらなる販売拡大を見込んでいる。
開発品で使用しているPPS樹脂は、耐薬品性にも優れており、冷却水だけでなく溶剤などさまざまな液体中で使用できる。自動車のほかに、ZEH対応の住宅設備で使用される自然冷媒ヒートポンプ給湯機や、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムなどの循環や冷却用の電動ウォータポンプにも使用できるという。
同社は、電動ウォータポンプの省電力化に貢献する商品として、開発品の提案を自動車部品メーカーや住宅設備メーカーへ進め、自動車の電動化や省エネルギー化によるCO2排出量の削減に貢献していく。