- 2022-5-18
- 制御・IT系, 技術・スキル市場分析, 機械系, 電気・電子系
- AI(人工知能), FA(ファクトリー・オートメーション), IoT(モノのインターネット), MCP(Microsoft Certifications Program), OA(オフィスオートメーション), VR(仮想現実), コミュニケーション検定, フィールドエンジニア, 現場(フィールド)
フィールドエンジニアとは?
フィールドエンジニアとは、自社製品と取引のある顧客の現場(フィールド)に出向き、要望に応じたサービスを提供する技術者のことです。対象製品は各種ソフトウェアやIT機器、産業機器、半導体製造装置、医療機器、OA(オフィスオートメーション)機器、FA(ファクトリー・オートメーション)機器など様々で、サービス内容も納品時の設置から製品の使い方の指導、定期的なメンテナンスやトラブル対応、製品の営業に至るまで多岐に渡ります。
機器のトラブルの場合は迅速な修理や復旧作業が求められることもあり、昼夜休日を問わず現場に駆け付け、対応に当たる必要があります。大規模な機器やシステムの納品ともなると、顧客の現場に長期間通うことになり、また、会社の顔として失礼のない対応が必要になるなど、心身への負担が大きくきつい職種と言えそうです。
一方で、自社製品に関する深い知識や柔軟な顧客折衝能力を身に付けるのには最適な仕事内容でもあり、社内や社外からの信頼も得られ、年収も平均より高めなので、やりがいを感じる職種でもあります。
フィールドエンジニアの仕事内容とは?
フィールドエンジニアの仕事内容は、顧客側では対応できない、専門的な知識のある技術者による対応が必要な作業全般になります。主な内容は製品のトラブル解決や設置サポート、製品の営業で、それぞれ内容を紹介していきます。
製品のトラブル解決
自動車がトラブルで動かなくなり、途方に暮れた経験がある方は、現場まで駆け付けて修理してくれるロードサービスのありがたみを感じたことがあるでしょう。生産現場も同じことで、機器のトラブルで生産が止まってしまうと大問題につながるため、迅速にトラブルを解決してくれるフィールドエンジニアの存在が重要になります。
フィールドエンジニアは機器の故障の連絡を受けると、状況を詳しく聞くことで故障箇所と故障原因を推測し、必要な修理道具や交換部品を用意して現場に向かいます。素早く修理して機器を復旧し、故障の原因や再発防止策について顧客に説明します。
トラブルが起きたことで顧客が不満を感じている場合でも、この工程をスムーズに進めることで信頼を深めることにつながります。修理に手間取ったり、説明が不十分だったりすると逆の結果になってしまうので、経験とスキル、さらにはコミュニケーション能力まで求められる高度な仕事内容になります。
設置サポート
企業向けの機器に関しては、多くの場合で設置サポートの対応が必要になります。例えばIT機器の場合、製品の設置からケーブル配線、ソフトウェアのインストール、製品の稼働確認、顧客への運転指導などを行います。製品のトラブルと違い、正常な機器を手順通りにセットアップしていけば問題なく対処できるので、難易度はそれほど高くありません。ただ、設置後すぐに顧客側の理解不足による運転ミスが起こらないように、運転指導は分かりやすく入念にする必要があります。
また、設置後の定期点検などの保全やメンテナンスもサポートに含まれます。サポートが不十分なために故障などのトラブルが発生した場合、担当者だけでなく自社に対する信頼を損ねることになります。定期点検の徹底や、故障する前の消耗部品の交換といった保守の実施で顧客の事業の安定化に貢献することで、顧客との良好な関係を継続します。
製品の営業
会社の顔として顧客と接するフィールドエンジニアの対応によって、会社と顧客との関係性が決まります。エンジニアとしてのスキルを活かした技術職ながら、接客や営業の側面もあることからコミュニケーション能力も求められます。フィールドエンジニアとしての業務をこなしながら、顧客との良好な関係を築くことで自社製品の継続的な導入が可能になるのです。
業務で培った製品に関する深い理解と、顧客に分かりやすく説明するスキルは、営業にも役立ちます。営業の技術的なサポートという役割を担い、製品の説明や技術的なアドバイスによって相手の理解度と安心感を高めることで、製品導入の大きな後押しになります。
エンジニアから営業まで、広範なスキルが必要なフィールドエンジニアは、確かにきつい仕事というイメージ通りかもしれません。しかし、それらのスキルを同時並行で磨くことができるため、その後のキャリアプランにプラスになります。フィールドエンジニアとしての道を究めるか、もしくは営業職やシステムエンジニア、生産技術者へ転身するなど、選択肢は広がります。
フィールドエンジニアはきついのか?
様々なスキルが身に付くフィールドエンジニアですが、問題が発生した顧客で、臨機応変かつ迅速に対応しなければならないストレスがあるなど、きつい仕事と認識されています。各地に営業やサービスの拠点を置く大手企業以外では、仕事の負担も相対的に大きくなります。また、技術的な対応だけでなく、問題が生じたことで不満を抱いている顧客に対し、製品や企業への信頼感に傷を付けない対応スキルや、日々進化する技術をキャッチアップする努力も欠かせません。このようなきついイメージがつきまとう職種のためか、人材の確保や定着に苦労している企業も多いようです。
フィールドエンジニアの仕事内容で、大きな比重を占めるのがトラブル時の対応です。たとえ適切な保守ができていたとしても、トラブルが発生する可能性はゼロにはできません。機器が故障したときに早く駆け付けて対応し、生産への影響を最小限に抑えるのがフィールドエンジニアの仕事です。トラブルはいつ発生するのか予測するのは難しく、夜間や休日中の場合でも迅速に対応しなければなりません。そのため責任は重く、心身への負担も大きくなります。
フィールドエンジニアは、現場で故障の状況から判断し、復旧までのおおよその時間を顧客に伝えます。正確な状況の判断と、時間内に確実に対処するためには、高度な専門知識が必要になります。復旧作業中に、予期しないトラブルに遭遇する場合もあります。そんな状況でも、慌てず冷静に作業を続けられる精神力も求められます。迅速かつ確実な復旧作業をすることで、顧客からの信頼感を得ることができます。
近年は、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、VR(仮想現実)技術などの普及に伴い、ソフトウェアや機器の進化と多様化、複雑化が進んでいます。フィールドエンジニアは、機器の進化に合わせて知識もアップデートする必要があります。様々なスキルや知識が身に付くことから、キャリア形成を目的にフィールドエンジニアを選択するのであれば、これらのことをきついと感じることは少ないのかもしれません。しかし、何となく選んでしまった仕事だったり、自分の適性と合わないと感じていたりする場合は、きついという不満を抱くことになりかねません。
フィールドエンジニアに向いている人の特徴
機器に触れることが好きなことは大前提で、コミュニケーションを取ることに抵抗感がなく、人の役に立つことをしたいと考えている人に適した仕事です。さらに、経験を積むことで逆境に負けないメンタルを身に付けると、とてもやりがいのある仕事になるはずです。
コミュニケーション能力
これまで何度も述べているように、フィールドエンジニアは機器の保守や修理をしたら終わりの仕事ではありません。機器の正常な動作を維持するだけでなく、顧客の気持ちを汲むことが大切です。顧客の不満を解消せずに帰ってしまえば、自社に対する信頼感を損ない、後々のビジネスに影響を与えてしまうでしょう。
そこで重要になるのがコミュニケーション能力です。ある程度の不満があっても誠実に対応することで、これまで築いてきた信頼関係にヒビが入ることを避けられます。初対面の場合でも礼儀を忘れず、はきはきとした挨拶や態度を心掛けるなど、良い第一印象を与えることが大切です。顧客とのコミュニケーションを前向きに取れる人は、フィールドエンジニアへの適性が高いと言えます。
誠実な対応とは、まず顧客の説明に耳を傾け、想定されるトラブルの原因と対処方法、復旧時期の目算を説明することです。トラブルに直面した顧客は、機嫌が悪かったり余裕が無かったりして、うまく状況を説明できないかもしれません。そんな場合でも、冷静に耳を傾け、正確な状況を把握する必要があります。また、専門用語をできるだけ使わず、顧客に分かりやすく説明するなど、どんな状況でも顧客の気持ちを察し、安心感を与えられる対応を心掛けましょう。
臨機応変な対応力
実際に現場を訪れると、例えば、機器の修理が難しい設置場所であったり、想定した以外の故障個所があったりと、前もって聞いていた状況と異なる場合があります。そんな時でも慌てず、臨機応変に対応しなければなりません。これまで培ってきた知識や経験を活かし、どのように対処すべきか頭でイメージしながら作業できる人には、向いている仕事です。
また、同じ機器を納めていても、個々の企業にはそれぞれの特色があり、現場の環境や使い方の違いで故障の場所や原因は変わってきます。そのような違いを楽しめて、チャレンジ精神を発揮できる場と捉えられる人であれば、きついと感じることは少ないでしょう。
フィールドエンジニアとしての経験を積み、製品の特徴や構造の理解が深まることで、臨機応変な対応が可能になります。本来のトラブルを解決した後、時間に余裕がある場合は別件の相談を受けることがあります。その結果、わずかな調整で機器の状態を改善したり、故障を未然に防いだりすることもあります。交換部品を用意していない場合は、簡単なものであれば現場の部品を加工して、自作することもできます。そのようなちょっとした気遣いが、顧客からの信頼を得るのに役立つのです。
メンタルの強さ
問題が発生した顧客の現場を、1人で訪問するのは気が引けるのも無理はありません。基本的には、顧客は一刻も早くトラブルを解消して欲しいと考えており、フィールドエンジニアの訪問を心待ちにしています。しかし、納入してすぐの故障や、連続して故障する場合などはフィールドエンジニアに対する不信感につながることがあります。そんな時でも慌てたり緊張したりせず、毅然とした態度で対応できる強いメンタルが求められる仕事です。
仕事終わりや休日のリラックスした時間に、緊急の修理依頼が入ることもあります。そのため、すぐに仕事に臨む気持ちに切り替えられる強いメンタルも必要になり、仕事のオンとオフをはっきりさせたい人にはつらいと感じるかもしれません。フィールドエンジニアとしてのプロ意識や、困っている顧客をすぐにでも助けたいという思いを持ち、経験やスキルをどん欲に追求することでキャリアアップを目指している人であれば、やりがいを感じられる仕事です。
フィールドエンジニアになるための方法
高校生がフィールドエンジニアを目指すのであれば、エンジニア系の専門学校に進学し、様々な専門知識を身に付けておくと有利です。社会人でも日中に働き、専門学校の夜間コースで学ぶことができます。必ず専門学校で学ぶ必要はありませんが、必要な知識に特化した、専門的で実践的な技術を学べます。
就職を控えている学生であれば、入社してからの研修やOJTで製品の知識を学び、フィールドエンジニアになるための準備ができます。必要な資格や経験は特に無く、営業職やシステムエンジニア、製造系の未経験からもフィールドエンジニアを目指すこともできます。
面接の際は、技術職としての経験だけでなく、営業などの顧客折衝経験があるとアピールポイントになります。フィールドエンジニアの必要性は今後も高まると見込まれ、積極的に採用、育成する企業が増えていくと思われます。
フィールドエンジニアの将来性はある?
近年のフィールドエンジニアの求人では、半導体製造装置やITシステムを得意とする人材の必要性が高まっています。IoTやAI、VR技術などの実用化に伴い、装置やシステムは高度化しており、セットアップから保守、修理対応などにも専門的な知識やスキルが必要になります。そのような特化した強みを持つフィールドエンジニアは、今後も広い分野で活躍する機会が増える見込みで、将来性は高いと言えます。
特に日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少傾向が続くため、多くの企業の製造現場では自動化や省人化を目的にFA機器の導入が活発化しています。搬送から組み立て、出荷まで一連の作業を担うロボットや機器の導入および、安定的な稼働を維持するためにも高度なスキルを備えたフィールドエンジニアが必要になります。今後もフィールドエンジニアの求人は増加し、未経験でも採用されやすい職種のため、キャリアプランとして選ぶのもいいでしょう。
確かにきつい仕事内容ですが、最新の高度な技術に触れられ、実践を通じて学べる魅力があります。年収はスキルや経験、会社の規模、地域などによってバラつきはありますが、平均年収は約500万円前後と業種別では高い方で、特にIT系となると600万円程度になります。
フィールドエンジニア育成に適切な資格
フィールドエンジニアに必ず必要な資格はありませんが、育成のために「MCP資格」や「コミュニケーション検定」などの取得を奨励する企業もあります。現場まで社用車を使って移動する場合も多いので、普通自動車免許はある方が望ましでしょう。
MCP(Microsoft Certifications Program)
MCPは、ITエンジニア向けのMicrosoftによる認定資格です。Microsoftが提供する製品や技術、ソリューションに関する知識を有することを証明できます。MicrosoftのOSやソフトウェアを採用している製品は多く、各種IT機器との連携も進んでいます。資格取得のための学習が、現場におけるシステムの管理やトラブルの解決などで役に立つこともあります。IT関連では他にも、IT業務の基本的な内容を習得できる国家資格の「ITパスポート試験」があります。
コミュニケーション検定
コミュニケーション検定は、顧客とのコミュニケーションに役に立つ能力の習得を目的としています。技術的に問題解決に成功したとしても、コミュニケーションで失敗しては顧客との良好な関係は築けません。フィールドエンジニアの仕事には、顧客からトラブルの詳細を正確に聞き出すヒアリング力や、状況を正しく伝える伝達力が求められます。相手の気持ちや場面に応じた、適切なコミュニケーションがとれるスキルを身に付けましょう。
普通自動車免許
特に修理対応の場合、交換部品や工具などを載せ、即座に出発できる乗用車が便利です。そのため普通自動車免許はあった方が望ましく、2トン(免許取得の時期で違いあり)程度のトラックも運転可能なため、乗用車に入らない大きさや重さの荷物でも運べます。緊急の対応が必要な場合でも、安全運転を心掛けましょう。
まとめ
仕事内容がきついというイメージがあるフィールドエンジニアですが、将来のキャリアプランに有利であったり、年収が比較的高かったりと、魅力的な職種であることが理解できたと思います。一方で、機器に触れることが好きで、コミュニケーションを取ることに抵抗が無く、困難な場面でも冷静に対応できる精神力が必要になるなど、人によって向き、不向きがあるのも確かです。
今後もあらゆる業種で必要とされ、顧客の円滑な企業活動をサポートすることで感謝される、将来性が高いやりがいのある仕事です。少しでやってみたいと感じた方は、思い切ってチャレンジしてしてはいかがでしょうか。