東京大学は2022年8月9日、コンクリートがれきを粉砕して圧縮成形し、高圧水蒸気で処理することで、コンクリートがれきを100%リサイクルした硬化体(以下、リサイクルコンクリート)を製造する技術を世界で初めて開発したと発表した。一般的なコンクリートを超える強度を示す材料にリサイクルできる。
一般的なコンクリートは、セメント、砂、砂利に水を加えて製造されるが、セメントの製造では全世界のCO2排出量の8%を占めるほど多くのCO2が発生することに加え、世界的に砂や砂利が不足している課題がある。大量に発生するコンクリートがれきの再利用率は約99%と高いものの、他の材料の投入を必要とせず、廃棄物を発生せずに、十分な強度を示す材料にリサイクルする手法はなかった。
こうしたことから、コンクリートがれきの用途拡大に加え、新たにセメントを用いることなく、十分な強度を示す材料として再生できる技術開発が求められていた。
研究では、コンクリートがれきを粉砕し、圧縮成形してリサイクルコンクリートを作製して、高圧水蒸気による処理を実施。リサイクルコンクリートの圧縮強度は、180℃の高圧水蒸気で処理した際に約5倍に増進した。これは、一般的なコンクリートの約2倍の強度となる。
分析により、高圧水蒸気処理によって、ほとんどリサイクルコンクリートの組成に影響を与えず、粗大な間隙が減少していることが確認された。強度はこれを理由に増進していると考えられる。また、開発した手法は、一般的な砂、砂利を用いたコンクリートのみでなく、砂、砂利の代わりに製鉄の副産物である鉄鋼スラグを用いたコンクリートにも効果的であることがわかった。
今回の研究により、新たな材料を投入せず、副産物も全く発生しない形で、コンクリートがれきのリサイクルが期待できる。大量のCO2を発生するセメントを使用せずに生産できるため、温室効果ガスの排出を抑制することに加え、新たな材料の投入が必要ないため、原料採取に伴う森林伐採や河床、海底掘削などが回避される。
今後は、リサイクルコンクリートの大型化や鉄筋などによる補強効果の検証、長期の耐久性評価などを実施していく。