電磁波の遮断をオンオフできるファラデーケージの開発に成功

ファラデーケージとは、導体で囲んだかごや容器のことで、外部の電磁波を遮断する効果があり、電磁波に対するシールドや静電気の精密測定などの目的で用いられる。今回ドレクセル大学工学部が開発に成功したのは、この電磁波の遮断をオンオフできるファラデーケージだ。

窓のブラインドが部屋に入る可視光線の量を調節するのと同じように、技術者は無線通信に使われる電磁波をダイナミックに制御したいと考えている。そうなれば機器は必要なときに信号を送受信できる上、静電気や妨害電波などの電磁波干渉から機器を保護し、盗聴されることも回避できるからだ。

これまで研究者たちは、マイクロ波の反射や吸収を動的に制御するために、機械的に圧縮したり減圧したりする発泡体を開発してきた。しかし、これらの発泡体は厚さが数ミリメートルあり、マイクロチップへの応用の妨げになっていた。

この課題を解決するため研究チームは、「MXene(マキシン)」と呼ばれる二次元ナノ材料を調査した。MXeneは、ポストグラフェン材料とも呼ばれ、前周期遷移金属(チタンや バナジウムなど)と軽元素(炭素や窒素)による複合原子層化合物の総称で、高い伝導性を持つ。また親水性を備えており、良好な塗布性を示すことも知られている。これまでの研究により、エネルギー貯蔵、プリンタブルエレクトロニクス、スプレー式アンテナ、柔軟な透明電極、量子ドット発光素子、センサーなど、幅広い用途に利用できる可能性があることがわかっている。

今回研究チームは、10種類のMXeneと電解質の組み合わせを、塗料スプレーを使って毛髪の約30〜100倍の厚みで塗布して試験を実施したところ、銅や鉄などの従来の金属では不可能な、マイクロ波放射を遮断するシールド効率の動的な調整機能を一貫して実証した。また、500回以上の充放電サイクルを通して性能を維持したという。

実験では、1V以下の電位で、レーダーで最も一般的な周波数帯であるXバンド(8.2~12.4GHz)に対する透明度と遮蔽度を迅速かつ可逆的に切り替えることができることが判明した。研究チームは、将来的には遮蔽変化の強度を高め、赤外線、テラヘルツ、高周波など、他の波長の遮蔽を検討することを目指しているという。

この研究成果は2023年1月16日付けの『Nature Nanotechnology』誌に掲載されている。

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