九州大学は2017年1月20日、新日鐵住金との共同研究グループが、大型シンクロトロン放射光施設SPring-8での4D観察を活用し、自動車向けの鋼板として利用されているハイテンの一種の複合組織鋼(DP鋼)が破壊される際のメカニズムを解明したと発表した。
同研究グループによるDP鋼の破壊課程の4D観察の結果、3次元的に複雑に絡み合う組織のうち、特定の箇所で遅れて発生した空隙が、その後急速に伸長して連結することにより、鋼板自体の破壊に至ることが分かった。
ハイテンの一種のDP鋼は、強度と加工性を兼ね備えた優れた鋼板として、自動車の車体などに多く用いられている。しかしフェライトとマルテンサイトが3次元的に複雑に絡み合う組織を持つことから、その破壊の際のメカニズムに関して学問的な統一見解を得ることが困難だった。
当研究で明らかになった破壊のメカニズムを考慮してDP鋼を設計することで、さらに強度と加工性に優れた鋼板の作成が可能になることが期待されるという。またDP鋼よりもさらに複雑で微細な組織を持つ先進鉄鋼材料の評価や開発にも、今回の一連の評価解析技術が有効になるとしている。