米ペンシルベニア州立大学、有機半導体レーザー実現に近づく新発見を発表

米ペンシルベニア州立大学のChris Giebink准教授のグループは、ハライド系有機―無機ペロブスカイト半導体を使い、連続したレーザー発振に成功したと発表した。これまで実現が難しかった有機半導体レーザーが誕生する日も近いかもしれない。この研究成果は『Nature Photonics』に論文「Continuous-wave lasing in an organic-inorganic lead halide perovskite semiconductor」として2017年11月20日に掲載されている。

有機半導体レーザーは無機半導体レーザーと比較して、柔らかくフレキシブルであること、有機分子を調整することで発振する波長を変えられるというメリットが考えられるため、医療診断から環境センシングに至る広い応用が期待されている。また、有機半導体レーザーは高真空を必要とする半導体製造装置でなく、溶液から沈殿させた有機―無機材料から製造できるようになるとされている。

Giebink准教授のグループは、次世代の太陽電池として期待を集める有機―無機ハイブリッドペロブスカイト材料を使った有機半導体レーザーを研究している。これはペロブスカイト材料が発光素子としても機能することが知られているためだ。ペロブスカイト材料は、外部からの光ポンピングによってレーザー発振させることができるが、この方法では発振状態が長く続かないことが知られている。研究チームは、比較的大きな有機分子を中央に閉じ込められたペロブスカイト構造を有するメチルアンモニウムヨウ化鉛(MAPbI3)を用い、正方晶から斜方晶への相転移温度よりも低い温度でレーザー発振が1時間以上続くことを実証した。

論文の著者の1人Yufei Jia氏は、「相転移以下の温度で励起させたとき時、最初の100ナノ秒は低温相(正方晶)からの発光が見られたが、すぐに高温相(斜方晶)からの発光に遷移したことは驚きだった」と述べ、材料全体は低温相(正方晶)の構造を保持しているが、レーザーにより高温相(斜方晶)のスポットが形成されたことで発振が長時間持続したと考察する。

半導体レーザーでは、量子井戸構造を用いて電子と正孔を高密度に注入し誘導放出によるレーザー発振を起こしている。研究チームは、ペロブスカイト材料の斜方晶構造の中に正方晶がスポットとして存在する状態があたかも量子井戸構造のように機能し、レーザーの連続発振を可能にしているのではないかと推測している。

現在は外部からのレーザー照射による光ポンピングを必要とするが、Giebink准教授は「この問題を解決して電流のエネルギーで発光できるようになれば、ペロブスカイトレーザーを実用化できる」とその実現に期待をかけている。

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A curious quirk brings organic diode lasers one step closer
Continuous-wave lasing in an organic–inorganic lead halide perovskite semiconductor

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