富士通研究所が2019年7月19日、北海道大学と共同で組み合わせ最適化問題を高速に解く次世代アーキテクチャー(デジタルアニーラ)を活用し、平面状に配置された磁石の最適な配列を計算する技術を開発したと発表した。
デジタルアニーラでは、問題の事象を全て0と1の変数として表現する必要があり、開発ではX、Y、Zの3軸に沿って配向可能な磁石の方向をそれぞれ3bitの変数で表現した。その変数と電磁気学の法則である「ビオ・サバールの法則」を用いて、発生する磁束密度の解を導出するように定式化。そして、その式を用いて、ある特定の部分に対して磁束密度が最大化するように目的関数を導入した。
さらに、組み合わせ最適化問題に必要となるQUBO形式で解けるように、新たな変数を目的関数に追加。これにより、デジタルアニーラで平面状の磁石配列の最適な設計構造が計算できるようになった。
シミュレーションを行ったところ、10×10個の2次元磁石配列の設計最適化問題が数秒で解けることを確認。得られた配列を用いると、従来の一列(1次元)配列のやり方で2次元配列にした場合と比較して、磁束密度の大きさが17%、エネルギーハーベスティングデバイスの発電効率としては16%向上したという。
なお同技術は、リニアモーターなど磁束密度の分布状態を制御する必要がある磁石配列の最適化など、多くの場面に応用可能だ。今後は、同技術をデジタルアニーラのテクニカルサービスの1つとして、2020年度の実用に向けて実装を進め、エネルギーハーベスティングなどで使われる磁気デバイスの発展に貢献するとしている。