- 2019-11-26
- ニュース, 化学・素材系, 技術ニュース
- IQE, TADF, ラダー構造, 九州大学, 京都大学, 内部量子効率, 有機EL, 有機ホウ素化合物, 研究, 茨城大学, 青色蛍光体
茨城大学は2019年11月25日、九州大学および京都大学と共同で、有機ホウ素化合物を活用した、高い発光効率と色純度を持つ有機EL向け青色蛍光体を開発したと発表した。
有機ELは、軽く、フレキシブルで、輝度、コントラストやエネルギー効率にも優れることから、次世代のフラットパネルディスプレイや照明装置の開発に向け、現在活発に研究が行われている。有機ELに用いられる一般的な有機蛍光化合物は、電荷から光子への変換効率「内部量子効率」(IQE)が最大25%で、発光効率に限界があることが知られている。一方で、イリジウムや白金などの希少重金属を使ったリン光発光化合物は、理論上100%のIQE達成が可能だ。しかし、希少重金属の調達コストや環境毒性が実用化する上での障害となっている。また、リン光発光体では、青色発光に関して高効率で高寿命の材料を得ることが困難だった。
こうした中、2012年に炭素、水素および窒素というごくありふれた元素のみを使用したIQE100%の有機ELが報告された。この技術は、「熱活性化遅延蛍光」(TADF)という現象が鍵となっており、以降実用化のためのTADF材料に関する研究が活発に行われている。特に青色のTADF材料については、色純度向上のための発光の先鋭化や、高輝度時の発光効率低下の抑制、およびEL素子の長寿命化などが課題となっており、これを実現するための新しい分子デザインが求められてきた。
今回の研究/開発では、「ラダー構造」と呼ばれる格子状の固く頑丈は分子骨格にホウ素、酸素原子を埋め込むことが、優れた青色発光特性の発現に重要であることを発見した。酸素の代わりに硫黄を用いた分子と比較したところ、発光効率が高輝度領域まで低下しなかったり、純粋な青色の発光色を示すなど、青色EL材料として優れた特性を示すことを確認した。
今後は、発光効率や素子寿命の向上を目指した発光体の分子設計のチューニング、および発光体合成ルートの短縮や収率向上を図ることで有機EL材料としての実用化を目指す。また、青色以外への波長域へも展開することで、EL照明など含む応用領域の拡張を目指す。