- 2020-8-3
- 製品ニュース, 電気・電子系
- MOSFET, SiC, オン抵抗, ショットキーバリアダイオード, 東芝デバイス&ストレージ
東芝デバイス&ストレージは2020年7月30日、SiC MOSFETの信頼性を向上させるデバイス構造を開発したと発表した。MOSFETの内部にショットキーバリアダイオード(SBD)を搭載した構造が特徴で、オン抵抗の上昇を抑えながら、MOSFETの信頼性を10倍以上向上させたという。
パワーデバイスは、自動車や産業機器などあらゆる電気機器の省エネルギー化に不可欠な半導体だ。特にシリコンカーバイド(SiC)は、従来のシリコンよりも高耐圧、低損失化が可能な次世代のパワーデバイス材料として注目されている。現状では、鉄道向けインバーターなど高耐圧品を中心にSiCが活用され、今後、太陽光発電や電源制御など、より幅広い耐圧での活用が期待される。
一方、SiCのさらなる普及に向けては、信頼性の向上が課題だ。その一つに、SiC MOSFETのドレイン・ソース間に存在するPNダイオードに通電すると、PNダイオードの動作によってSiC結晶中の欠陥が拡張するという問題がある。結晶欠陥の拡張は、MOSFETのオン抵抗を変動させ、製品の不具合にもつながってしまう。
そこで東芝デバイス&ストレージは、SiC MOSFETの内部に、PNダイオードと並列にSBDを配置する構造を採用し、結晶欠陥の拡張の問題を解決した。PNダイオードよりもオン電圧の低いSBDを配置することで、SBD側に電流が流れ、PNダイオードへの通電を抑止。これにより、結晶欠陥の拡張を防止し、オン抵抗の変動を抑えた。
また、SiC MOSFETにSBDを搭載したデバイスは、これまでにも実用化されていたものの、オン抵抗が大きくなるため、それを許容できる3.3kVなど高耐圧な製品にしか適用できなかった。しかし今回開発したデバイス構造は、MOSFETの中にあるMOSFETエリアとSBDエリアの比率を最適化したことで、オン抵抗を従来技術によりも抑制することに成功した。その結果、SBDを搭載し、信頼性の高い耐圧1200VのSiC MOSFETを達成している。
本技術を採用した製品は2020年8月下旬から量産する予定だ。