リチウムバッテリーの寿命を伸ばすソフトな固体電解質を開発

Image courtesy of Jinsoo Kim

米ローレンスバークレー国立研究所は、2020年7月20日、リチウムバッテリーの寿命を伸ばせる柔らかい固体電解質を開発したと発表した。カーネギーメロン大学と共同で行った研究の成果は『Nature Materials』に2020年4月27日付で発表されている。

1回の充電で電気自動車(EV)が数百キロメートル走行できるようにする充電式バッテリーを開発するため、これまでに科学者たちは、バッテリーのアノードに使用されている黒鉛(グラファイト)をリチウム金属に置き換えるという課題に挑戦してきた。しかし、リチウム金属を用いることでEVの航続距離を30~50%伸ばすことはできるが、充放電サイクルを繰り返す過程でリチウムアノードにデンドライトと呼ばれる樹枝状の結晶が形成されることが原因で、バッテリーの耐用年数が短くなるという課題が残っていた。最悪の場合、デンドライトがカソードと接触してバッテリー内のセルをショートさせてしまうこともある。

何十年もの研究において、セラミック製のような硬い固体電解質はデンドライトがセルを貫通するのを最も効果的に防ぐと考えられていたが、実際にはデンドライトの析出を防ぐことはできていない。

今回、研究者らは、ポリマーとセラミックで作る柔らかい固体電解質を開発した。この固体電解質は、初期段階でデンドライト形成を抑制するので、デンドライトが成長してバッテリーが故障するのを防げるという。

研究者らが新しく開発した固体電解質には、内部の微細孔をナノサイズのセラミック粒子で満たした固有微細孔性高分子(Polymers of Intrinsic Microporosity:PIM)が使用されている。この電解質は、柔軟性を持ち、柔らかな固体材料であることから、アノードと電池セパレーターとの間にこの電解質を積層したリチウム箔のロールを製造することもできるという。電池製造業界にとっては、炭素ベースのグラファイトから成るアノードの代替品を既存の組み立てラインで製造できることは魅力的だろう。

研究チームは、X線を使用してリチウム金属と電解質との界面の3D画像を作製し、16時間に渡って、大電流下でのリチウムめっきと剥離を視覚化し、PIM複合電解質のデンドライト抑制機能を確認した。PIM複合電解質が存在しない場合は、界面でデンドライト形成の初期段階の明確な兆候が見られたのに対し、PIM複合電解質が存在する場合は、リチウムが途切れることなく滑らかに成長する様子が観察された。この実験データだけでなく他のデータからも、固体電解質の化学的特性と機械的特性の両方を考慮に入れた、リチウム金属電着に関する新しい物理モデルからの予測が裏付けられたという。

半固体電池のベンチャー企業である米24M Technologiesは、今回開発された材料をEV向けや電気垂直離着陸機(eVTOL)向け大型バッテリーに組み込んだという。ローレンスバークレー国立研究所のBrett A. Helmes氏は、このPIM複合固体電解質技術は汎用性が高い可能性があり、高出力での使用が期待できるようだと語っている。

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