医療用ウェアラブルデバイスに活用可能な単相CNT複合材料を開発――高導電性かつ柔軟で高耐久な電極パッドを提供 産総研ら

産業技術総合研究所は2021年5月17日、日本ゼオンと共同で、神経調節療法用医療機器などの医療用ウェアラブルデバイスの電極パッドなどに適応できる、柔軟かつ安定した高導電性を有する単層カーボンナノチューブ(CNT)シリコーンゴム複合材料を開発したと発表した。

医療用ウェアラブルデバイスは生体情報のモニタリングだけではなく、神経に対して電気刺激を加える疾患治療への活用も始まっている。このようなデバイスに用いられる生体電極センサーは、密着性を高めるための柔軟性や安定した高い導電性が求められる。また、製品として普及させるためには低コストで高い耐久性を持つ導電性シリコーンゴムを製造することが課題となる。

今回開発した複合材料は、シリコーンゴムに市販の導電性フィラーと純度の高い単層CNT(日本ゼオン製ZEONANO SG101)を添加し高分散化したものだ。CNTはカーボンブラックと比較して添加量が少量で済むため硬度が大幅に低下し、柔軟な性質を持つ。

また、皮膚から電気信号を受信したり入力したりするための生体電極の材料には、電極の厚み方向の体積抵抗率の低さと、着用者の動きなどによる接触状態で抵抗が変化しないような厚み方向の体積抵抗率のばらつきが小さいことが求められる。今回開発した複合材料は、市販の導電性フィラーのみを用いたものと比較し、体積抵抗率のばらつきを3分の2程度に抑制できた。さらに、高純度のZEONANO SG101単相CNTを用いることで、他社製単相CNTを用いたものと比較して劣化を大幅に抑えられ、耐久性が増した。

今回開発した柔軟で安定した高導電性を持つ複合材料は、医療用ウェアラブルデバイスの電極パッドをはじめ、通電性が必要な接点用、電子部品製造ラインなどでの帯電防止用、高電圧ケーブルなどの電磁場シールド用などへの応用が期待されるという。

また、日本ゼオンは今回開発した複合化技術を用いて、アメリカのメーカーとコンパウンド製品を開発。同製品はパーキンソン病などが原因で発生する手の震えを電流で抑える医療用ウェアラブルデバイスの電極パッドに採用されている。

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