酸化物系セラミックスを用いた、ナトリウムイオン電池の電極形成法を開発 九州大学と名古屋大学

九州大学は2023年1月4日、同大学大学院工学研究院や名古屋大学などの研究グループが、酸化物系セラミックスを用いたナトリウムイオン電池の開発に必要な電極形成の手法を開発したと発表した。これまで困難だとされてきた焼結による電極材料と電解質材料などの緻密化を可能にする方法で、安全で堅固な全固体電池の実現につながる成果だとしている。

製造にレアメタルを必要とするリチウムイオン電池に代わる電池として、レアメタルを必要としないナトリウムイオン電池が注目されているが、これまで酸化物系セラミックスを用いた研究開発は比較的限定的だった。電池性能を向上させるには、焼結によって電極材料と電解質材料などを緻密化させることが必要で、とりわけナトリウム系の材料では困難なのが課題だった。

研究グループは、優れた特性を有するナシコン型Na3Zr2(SiO4)2(PO4) (NZSP)のセラミック電解質と、同一の結晶構造と類似の化学組成を有するナシコン型Na3Ti2(PO4)3(NTP)の電極材料に着目。NTPの組成でいったんガラスを形成し、その粉末を塗布して加熱することで、より低温で緻密化させる「ガラス―セラミックス法」を用いて双方を接合した。焼結に必要な温度は約850°Cで高温による影響も抑えられた。また、将来の酸化物セラミックス電池製造で要望のある1μm水準の厚みを得るために、汎用性の高いスピンコート法で実現できることを示した。

こうして作られた電極を用いた半電池は2.2 Vで充電や放電ができ、非常に低い過電圧と優れた繰り返し充放電特性を示した。従来のリチウムイオン電池では著しく性能が落ちる―20°Cの低温でも、性能の低下を抑えることができた。

研究グループではさらに研究を進め、資源制約のない原料から作られる安全で堅固、過酷な環境でも動作する電池としての実用化を目指す。

今回の研究成果は2022年12月28日、米国化学会の雑誌「ACS Applied Energy Materials」に掲載された。

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