- 2022-4-14
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- Matteo Brighi, Radovan Cerny, カルボヒドリドホウ酸ナトリウム(NaCB11H12), ジュネーヴ大学, ナトリウム, ナトリウムイオン電池, ヒドリドボレート, リチウム, リチウムイオン電池, レアメタル, 固体電解質, 学術, 液体電解質
スマートフォンや電気自動車などの充電池として広く使われているリチウムイオン電池は、材料のリチウムがレアメタルであるため、将来にわたり安定した材料供給がなされる保証がない。そこでリチウムに替わる材料として、注目されているのがナトリウムだ。ナトリウムは地球上に豊富にあるため、リチウムに比べて安価に安定して材料供給できるという大きな利点がある。しかし、ナトリウムイオン電池の性能はまだリチウムイオン電池に比べて低く、世界中の研究機関やメーカー、スタートアップが性能の向上と実用化を競っているところだ。
ナトリウムはリチウムよりも重いため、ナトリウムイオンは液体電解質の中で動きにくく、固体電解質を開発する必要がある。しかし、これまでに開発された電解質は、ホウ素と水素原子からなるヒドリドボレートと呼ばれる化合物で構成されており、リチウムイオン電池と同等の性能を達成できなかった。Radovan Cerny教授が率いるジュネーヴ大学の結晶学研究室が最近行った2つの研究は、この問題を解決することに成功した。
1つ目の研究は、導電効率の高い電解質材料であるカルボヒドリドホウ酸ナトリウム(NaCB11H12)の開発だ。「もともと、核医学で使用されるこの材料は導電性ではありませんが、結晶構造を変え、的確な原子配置にすることで、導電性を持たせることに成功しました」とCerny教授は説明する。
2つ目の研究は、開発した電解質材料を電池として構成することだった。電池が機能するためには、液体であれ固体であれ、電解質が電池のプラスとマイナスの電極に密接に接触していなければならない。「そのためには、ネジやバネなどで圧力をかけなければなりません。私たちは、固体電解質にかける理想の力の大きさを探しました」と、研究チームのMatteo Brighi氏が説明する。「水深4000mの水圧に相当する400気圧程度が理想であると分かり、数回、ネジを回すだけで簡単に実現できます」
本研究成果は、特に自動車産業において、ナトリウムイオン電池の製造を容易にする道を開くものだ。ナトリウムイオン電池は、やや重いため、主に自動車の動力源として使われる可能性があるという。研究チームは、「製造の費用対効果もまだ評価していませんが、私たちが発見した材料が実に興味深いものであることを産業界に認識してもらうことが今は重要です」と結論づけている。