圧電単結晶薄膜とSOIウエハーの接合技術を確立し、「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」を試作 OKIとKRYSTAL

沖電気工業(OKI)は2022年8月17日、KRYSTALと共同で、圧電単結晶薄膜とSOI(Silicon on Insulator)ウエハーの接合技術を確立し、「圧電単結晶薄膜接合ウエハー」の試作に成功したと発表した。超音波センサーなど圧電MEMSデバイスの性能を飛躍的に向上させる。

圧電MEMSデバイスは、小型化と低消費電力化が求められており、素材レベルでの基本特性の向上が課題となっている。この圧電MEMSデバイスの基本特性は、圧電薄膜によって決められ、あらゆる特性が「単結晶」化で向上する。

しかし、ウエハー上に単結晶薄膜を形成するには、特殊なバッファー層が必要で、実現できるデバイス構造が限定されていたため、一般に特性は劣るが製造が容易な「多結晶」薄膜が用いられている。

今回、KRYSTALの高性能なPZT圧電単結晶薄膜だけを、OKIのCFB(Crystal Film Bonding)技術でバッファー層から剥離。SOIウエハーに直接接合する技術を確立した。圧電単結晶薄膜接合ウエハーは、この技術を用いて試作しており、バッファー層なく単結晶薄膜のみを直接デバイスに搭載でき、さまざまなデバイス構造に適用できる。

この接合ウエハーを用いて試作したMEMS超音波センサーの測定結果は、超音波センサーの感度(送受信電力効率)が従来の多結晶薄膜と比べ、20倍以上(送信4倍と受信6倍の積)。確立した接合技術は、圧電単結晶薄膜の高い性能を損なわず、デバイスメーカーの既存MEMSプロセスへ、この接合ウエハーを適用できることを実証した。

圧電単結晶薄膜の接合プロセスとデバイス構造

今回は、シリコンウエハー、SOIウエハーへの接合を実証したが、ガラス基板、有機材料基板などへも適用でき、デバイス構造を限定しないため、圧電単結晶薄膜の用途分野を大きく広げられる。また、単結晶薄膜は、必要な部分だけを選択的に剥離/接合できる。必要な薄膜を同一ウエハーから複数回繰り返し剥離でき、資源の有効活用、環境負荷や製造コストを低減する。

両社は、圧電MEMSデバイスメーカーをターゲットにし、11月を目途にサンプル出荷を開始。2023年には、さまざまな要求に応じたカスタムウエハーの提供を目指す。今後は、同一のウエハー上へ、複数の異なる材料の圧電単結晶薄膜を接合する技術を開発し、より高い基本性能の向上を目指す。

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