透過型亜酸化銅太陽電池で発電効率9.5%を達成――セルサイズを10×3mmに拡大、40mm角品も試作 東芝

東芝は2022年9月27日、透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池において発電効率9.5%を達成したと発表した。同社によると、2022年9月時点で世界最高の発電効率だという。

代表的なタンデム型太陽電池としては、ガリウムヒ素半導体(GaAs)などのⅢ-V族太陽電池を採用したものや、ペロブスカイトを採用したものの開発が進んでいる。

ただし、Ⅲ-V族太陽電池を用いたものは、シリコン単体の太陽電池と比較して製造コストが数百倍~数千倍となる。また、ペロブスカイトを用いたものは、ペロブスカイトの信頼性がまだ十分ではないため、タンデム化に向けて信頼性の大きな向上が求められる。

同社が開発を進める透過型Cu2O太陽電池は、銅や酸素を主材料としたものだ。これらの材料に加えて、ガラス基板や製造に用いるスパッタリング装置も安価で入手可能。Ⅲ-V族太陽電池と比較して大きなコスト低減が期待できる。

また、透過型Cu2O太陽電池は硬く丈夫で、水に溶けないため湿気にも強い。封止などの保護処理を施していない状態で、実験室の大気に触れる室内環境に1年置いたところ、発電効率や透過率に変化が見られなかった。

透過型Cu2O太陽電池の信頼性に関するポテンシャル
(左)効率(右)透過率

波長600nm以下の緑/青/紫外光といった短波長光を吸収して高効率で発電し、同波長以上の赤/近赤外光などの長波長光を高透過する。長波長光で高効率に発電するシリコン太陽電池をボトムセルに採用することで、短波長から長波長までの光を高効率でエネルギーに変換可能となる。

同社は今回、昨年12月に公表した3mm角から10×3㎜にセルサイズを拡大した。セル壁面で再結合する光キャリアが相対的に減少したことで、光電流(短絡電流Jsc)が約1割増加し、発電効率が8.4%から1.1ポイント向上している。

セルサイズを拡大した場合の光キャリアの動き(上面から見たセル)

発電効率25%のシリコン太陽電池に今回開発した透過型Cu2O太陽電池を積層することで、全体の発電効率は28.5%と試算可能。なお、同社は、Cu2O/Siタンデム型太陽電池の実用化レベルに達する発電効率を30%に設定している。

また、大面積基板に成膜できる大型スパッタリング装置を導入し、40mm角の大型セルを試作した。発電効率は8%前後となっている。

40mm角の透過型Cu2O太陽電池セル

なお、今回開発したCu2O/Siタンデム型太陽電池をEV(電気自動車)に適用した際の充電なしの1日の航続距離は、約37kmと試算された。

発電効率を28.5%とし、車載設置面積を3.33m2と仮定して、EVの電費にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)試算(太陽光発電システム搭載自動車検討委員会の中間報告書における試算方法)で使用された2030年の想定値12.5km/kWhを用いて試算している。

今後はさらなる高効率化を図るほか、現在普及しているシリコン太陽電池と同サイズとなる数インチ級のCu2Oセル製造技術を開発し、東芝エネルギーシステムズと共同で量産化に向けた技術開発を進め、2025年度の実用化を目指す。

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プレスリリース
低コスト高効率タンデム型太陽電池向け透過型Cu2O太陽電池で世界最高効率8.4%を達成 東芝

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