効率的に大気からCO2を回収/固定化する新しい風化促進技術「A-ERW」を開発 早稲田大学ら

早稲田大学は2022年10月19日、三菱重工エンジニアリング、北海道大学、京都府立大学との共同プロジェクト「岩石と場の特性を活用した風化促進技術“A-ERW”の開発」が、新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)によるムーンショット型開発研究事業「ムーンショット目標4:2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に採択されたことを発表した。大気からCO2を効率的に回収/固定化するA-ERWを開発するとともに、国際認証の取得を目指す。

気候安定化とカーボンニュートラルの達成に必要なNegative Emission Technologies(以下、NETs)として、岩石を粉砕、散布し、大気中のCO2を風化の過程(炭酸塩化)のもとで回収、固定化していく風化促進技術が注目されている。今回のプロジェクトでは、このNETsのうち、天然の岩石を用いて大気中のCO2を回収、鉱物化させる風化促進技術(Enhanced Rock Weathering、以下、ERW)を対象とする。

ERWは、人工的に玄武岩などの苦鉄質岩を粉砕、微粉化し、耕作地散布などを実施して、風化の過程(炭酸塩化)でCO2を吸収しようとしている。しかし、その適用で新たに放出されるCO2や、炭素収支の定量化が不十分で、日本で実施した場合の地層や岩石ごとに異なる総固定量や、実際の正味固定量が不明だった。

プロジェクトでは、容易に様々な種類の天然岩石を入手できる地震火山大国である日本の利点を生かし、日本の岩石との散布場の特性を用いて、大気からCO2を効率的に回収、固定化する風化促進技術であるA-ERWの開発を目指す。

これまでERWの対象は、主に玄武岩のみだった。粉砕して耕作地に散布することを想定していたため、雨水中に溶解した大気中のCO2(炭酸イオン、炭酸水素イオンを含む)が、散布した岩石に作用するのに時間がかかっていた。正味固定量も多くなく、実際の証拠となる炭素会計に資するデータもほとんどない状態だった。

そこで、プロジェクトではERWを「物理的な比表面積拡大(物理的な風化)」×「物質輸送と化学反応によるCO2鉱物化」と捉え直し、それぞれのプロセスの加速法をできる限り少ない追加エネルギーで適用していく。耕作地散布も、土壌に合わせた管理法や栽培法を組み合わせ、実質の固定量を増大させる。

また、岩石ごとのCO2鉱物化ポテンシャルや前処理エネルギー、散布方法ごとのCO2鉱物化速度や所定時間経過後の鉱物化率などをデータ化していく。さらに、効率的なモニタリング法の開発と、実環境場での試験による予測モデルの妥当性の確認を実施。炭素会計LCAのためのエビデンスとして、情報基盤のひな形を整備する。

A-ERWでは、モデル地域として、地質調査データが豊富な北海道を選定。各地で得られるA-ERWに適した岩石を効率的に粉砕し、その土地に適した方法で風化促進させ、大気中のCO2を除去するNETsでありながら、散布による農作物の収量アップや土壌の改善といった資源循環、コベネフィットをもたらす。また、国内外に精度の高い炭素会計LCAを示し、国際的なコンセンサス醸成を目指す。

なお、A-ERWは、Advanced Enhanced Rock Weatheringの略で、“A”には、Accelerated、Active、Agro-industrial、Advantageous、Accurate Accountingの意味を含ませているという。

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