- 2022-12-14
- ニュース, 化学・素材系, 技術ニュース, 電気・電子系
- LED, 光エレクトロニクスデバイス, 半導体製造, 東京大学, 東京都立大学, 殺菌, 深紫外光, 研究, 筑波大学, 透明導電性, 電極
東京都立大学は2022年12月13日、同大学大学院理学研究科と東京大学大学院理学系研究科、筑波大学数理物質系の共同研究グループが、深紫外光を透過する新たな電極材料を開発したと発表した。
深紫外光は、殺菌や浄化、半導体製造といった分野で用いられている。現状では水銀ランプなどが光源に使用されているが、より小型で低コストの次世代光源としてLEDの採用が期待されている。
一方で、LEDなどの深紫外光エレクトロニクスデバイスでは、デバイスへの光の出し入れに用いられる透明電極が深紫外光を吸収してしまうという点が課題となっている。
同研究グループは今回、パルスレーザー堆積法を用いてSnO2とGeO2の混合比を変えた薄膜をサファイア基板上に成長させて、GeO2の割合が70%以下の範囲でルチル型結晶構造を有するSn1−xGexO2薄膜を得た。
冒頭の画像は、(a)がSn1−xGexO2の結晶構造、(b)がサファイア基板上に成長したSn1−xGexO2薄膜のX線回折パターン、(c)が合成したSn1−xGexO2薄膜のa軸長さ、(d)がc軸長さ、(e)が単位格子の体積を示している。
同薄膜では、GeO2の割合が増えるにしたがって深紫外光に対する透過率が上昇することが判明した。
次に、同薄膜に微量のタンタル(Ta)を電気伝導性を付与するためのドナー不純物として添加したところ、GeO2の割合が約30%以下の薄膜において高い電気伝導性が生じた。
添加するTaの量を最適化したSn1−xGexO2薄膜の深紫外光に対する透明導電性は、スズ添加酸化インジウムやアンチモン添加酸化スズなどの実用的な透明電極より高い。また、その他の既に知られている材料の中でも高いレベルに達している。
さらに同研究グループは、光エレクトロニクスデバイスへの応用に向けて、実用的な深紫外LED材料である窒化アルミニウム上にTaを添加した同薄膜を成長させることを試みた。
窒化アルミニウム上に同薄膜を直接成長させた場合、結晶性が悪く、電気伝導性が低い薄膜しか得られなかったため、厚さ約10nmのSnO2膜をシード層として挿入した。これにより、サファイア基板上と同レベルの透明導電性を有する薄膜の成長に成功している。
今回の研究結果は、深紫外光エレクトロニクスデバイスの高効率化や産業での応用に寄与することが期待される。